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真鉄のその艦、日の本に
第八話 人でなし
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わらず、人の血を見るのがお好きですねぇ。」


悔しがっている古本を、徳冨は白い目で見ていた。


「な、な、何をしたんだ君はァ!?」


前線指揮所のテントから、指揮官が声を上ずらせながら出てくる。この人物だけは、今の所業が古本の仕業だと言う事に気づいたようである。


「あ?興味ある?ちょっとね、弾にかかる重力の向きと強さを変えてやってさ。そしたら、上手い具合に弾が曲がるのよ。ある程度弾の勢いも長続きさせられるしね。ま、結構練習したよ?思い通りに操るにはねぇ。重力を操る能力ってのも中々難しくてさ。あの群衆共にかかる重力を10倍にして一気に潰しちまえれば楽なんだけどさァ、中々そうはいかないのよね」


大仰に肩をすくめながら話す古本の発言に、前線指揮官は呆気にとられる。
古本はそれを鼻で笑った。


「あ、信じてないな〜?ま、信じなくても良いんだけどね。自分で勝手に、弾の軌道が曲がる適当な理由を考えてくださ〜い」


前線指揮官の顔が引きつる。「あ、悪魔か貴様…」と声が漏れた。


「君も一応公僕なのだろう…?彼らは混乱して向かってきているが、日本の国民だぞ…彼らもいわば状況の被害者だ…どうしてそんなに笑いながら殺せるんだ……日本軍が日本人を撃ってどうするんだ…」


古本は、わざとらしく大きなため息をついた。



「あんたほんっと失礼な事ばっか言ってくれるね。陸軍の連中も同じ人間で、同じ国民な訳。それに牙を剥いて暴力振りかざした時点で、理由はどうあれ彼らは罪を犯してるでしょうが。何の罪もない国民、て訳じゃないの。被害者面は〜、できないの〜」

「し、しかしここまでやるのはやりすぎだ!こんなに殺さなくとも…」

「はいはい、分かった分かった。あんたが正しい、俺が間違い。あんたは俺を悪者にしとけ、俺のおかげで助かった身分でな。あんたはできるだけ連中に優しくお帰り頂こうとしてな、それで連中を止められたのか?止められてないだろ。そこで大悪党の俺登場よ。俺が連中をぶっ殺してやったおかげで、あんたは部下共々救われる。ほんであんたらは俺に罪を全ておっかぶせる事ができる。あんたらの命と良心、両方助けてやった俺はマジ大悪党だねぇ〜」




前線指揮官は、その顔を青ざめさせる。口がパクパク動くが、言葉は何も出てこない。
その様を見て、古本は滑稽だな、と感じた。
状況と、感情が噛み合わない時にどちらを優先させるべきかも分からない軟弱者だ。
そのような者に何も守れはしない。
理屈も思想も、現実的な危機に対処する力を持たない。そんなものは平時でこそ問題にされるものだ。
そこまで考えて、おっと、と古本は思う。
すぐにこういう人間を見下してしまうから自分はいけない。やはり自分達、東機関は
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