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真鉄のその艦、日の本に
第八話 人でなし
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ッチをどん、どん、と叩く。


「待ってくれ!あいつは俺の大事な部下なんだ!放っておけるか!おい!」

―――――――――――――――――

「だいたい、脱出できそうじゃの」

発令所の小型モニター群には、急いで脱出を図る曹士たちの姿が映し出されていた。負傷者を力を合わせて運び、混乱しながらも列を作って、整然と艦を離れていく。日本人らしい。一度の訓練だけでここまで迅速に動けるものではない。やはり、勤勉で規則に従順な所が大きいのではないか、と本木は思う。



そう思いながらモニターを見ている本木を始め、幹部達は全員が"席についたままだった"。


―――――――――――――――



「くそっ、開けよ!おい、誰か!何で誰も来てくれんのや!おい!」


津村が、鉄格子に何度も何度も体当たりを試みるが、それで牢が破れる訳もなく、そして誰も来てくれなかった。長岡は早くも諦めている。

ヤキが回ったんだな、こういう時に限って、営倉にぶちこまれてて、誰からも見捨てられるなんて。

ちら、と遠沢の様子を見た。遠沢は最初から何もしなかった。諦めたのか…こいつも。長岡は思う。くそっ、こんな事なら。

もっと早く死んでおくんだった。

不意に、プシューという音が、営倉の天井の換気扇からした。白い煙が、そこから漏れ出している。

何だ、ありゃあ。

そう長岡が思った時に、遠沢が大声で叫んだ。


「二人とも伏せて下さい!!!」


何故だか分からないが、その時の遠沢の声には、長岡の体は即座に反応し、頭を抱えて床にうずくまった。途端に、大きな音。ドカンという音が響いて、破片と塵が舞い上がり、長岡はむせこんだ。
刹那、細い手に体を引っ張られる。衝撃に平衡感覚を揺さぶられ、ふらつきながら、長岡は遠沢に導かれるままに営倉の外へと這い出た。


「ごぼっ……げぇほっ……がっ…」


薄暗い営倉から白色灯が灯っている通路に出て、まだ幾分か新鮮な空気を吸いながら、長岡は自分を引っ張る遠沢を見やる。遠沢は険しい顔のまま、前だけを見ていた。小柄なその肩には、気を失っている津村を抱えている。津村もけして大柄ではないが、しかし男一人を抱えながら、地を這う長岡を引っ張る目の前のこの小娘は、存外に強靭であった。


「…少し移動します。」


遠沢の姿に釘付けになっていた長岡は、自分を更に引っ張る力に我に返る。ふらつく足下にぐっと力を入れて何とか立ち上がり、遠沢についていった。

――――――――――――



「営倉が爆破された。恐らく、中の三人は脱出したろうな。」


名越船務長の言葉に、発令所には僅かに動揺が走る。


「…ま、さすがに元東機関の工作員ね、一筋縄ではい
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