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真鉄のその艦、日の本に
第八話 人でなし
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意に、背中に冷たく硬い感触があり、田中は我に返った。


「…中野中尉への機能の引継ぎが上手くいってなかったみたいで。不本意です。でも仕方が無いですね。」


いつの間にか、発令所の出口から、自分の背後へと風呂元が移動していた。背中の感触は、銃口だ。田中がそう確信するのとほぼ同時に、頭の中の違和感、もやもやが一気に晴れていくような感覚を覚えた。


「貴様ら……誰だ…?」


問う田中に、妖艶な笑みで応える風呂元。
その笑みは、背後をとられている田中には見えなかった。




――――――――――――――――

東京郊外に出現した勢力は、その殆どが関東近辺の反政府ゲリラの連合軍であった。
即座に帝都守護の近衛師団が迎撃にあたる。
帝都東京に、銃声と爆音、炎が交錯する。80年前の大戦でも、一度しかこの帝都には戦火は及んでいない。しかもその一度は、空母に爆撃機を積んでくるという米軍の奇策による空襲だった。地上部隊同士の激突という事態は、経験がない。想定もされていなかったかもしれない。
東京への侵入を防ごうと、戦闘ヘリや戦車などの重火器も総動員し、近衛師団は迎撃にあたる。帝都が叛乱軍の支配下に収められるという事にもなれば、陸軍の沽券に関わる。内地で収まってる役立たずとの評判もある近衛師団は、死に物狂いで奮戦した。

しかし、この時既に帝都東京に浸透している連中が居た。どうやって忍び込んだのかは定かではない。それを悟られないようにやるのが彼らだからである。戒厳令が出されてから、東京に入り込んだのでは無いのかもしれない。ずっと前から、ここに居て時を待っていたかもしれない。

中共国家公安部特務機関敵偵処の要撃部隊、飛虎隊。これもまた、"人でなし"の部隊である。そして、大国中国のその部隊は、数も多い。数千人。しかもその数千人が、今この瞬間まで息を潜めて待っていた。

彼らがまず行ったのは、殺戮。殺戮である。ひっそりと忍び寄って、政府中枢を奪る、などという事はしなかった。普通に敵部隊との鍔迫り合いでは、強固に張られた防衛戦を揺らがせるには足りない。混乱が必要だ。阿鼻叫喚の大混乱が。少しでも相手が嫌がる事をやるのが、飛虎隊の手管であった。

彼らは、日本陸軍の制服を着用していた。その格好で、まずは東京の、貧民街を襲う。人口が密集した地域、そして規範意識が希薄な人々ばかりの地域を、混乱の「着火点」に選んだ。

プレハブの家の扉を蹴破り、ラジオの前で毛布にくるまり震えている親子を、問答無用で撃ち殺した。廃ビルを住処にしているホームレスに、火炎放射器で火を見舞った。逃げ惑う人々の真ん中に手榴弾を放り投げ、手を上げて投降し薄ら笑いで機嫌をとろうとしてくるような連中の喉に笑顔を返しながらナイフを突き立てた。泣いて命乞い
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