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真鉄のその艦、日の本に
第七話 蜂起
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第七話 蜂起

静かになったもんだ、と思う。作戦を終え、戦闘空域から離脱を図ってしばらく経っているこの状況なら当然ではあるが。戦闘に被害復旧に慌ただしく動き回っていた曹士にも休息が必要だ。これだけの犠牲を出した状況で寝られるかは分からないが。自分自身もまだ現実感が湧かない。こんな激しい戦闘を経験する事になるとは、ほんの一週間前には想像していなかった。

営倉の、毛布一枚敷かれた床にごろんと寝転んで、長岡はぼんやりと考えていた。この戦闘はどう報道されるのだろう、どう日本に影響を与えていくのだろう、後世の日本の歴史の中にどう位置付けられるのだろうか。考えた所で、中々明確にイメージが描けるものではなかった。

ガチャ、とハッチが開く音がして、長岡は体を起こす。牢屋の格子の外を覗くと、数人の銃を持った曹士に促されて、飛行服を着た若い男と、小綺麗でかつブカブカな青のツナギを着た小柄な女が、それぞれ別の部屋に入っていっていた。


「航空隊副隊長津村中尉、そして6分隊遠沢准尉、貴様ら命令違反のかどで、入港まで営倉入りだ。上に報告して、以後の処理は決める事になるだろう。それまでここで頭を冷やしておけ。」


名越船務長の言葉に、若い二人は部屋の中から「はっ」と返事を返す。船務長の隣には、6分隊長の有田の姿もあった。


「軍に怪我の功名はあってはならんのだ、遠沢。上への報告は控えてもらうように、俺が艦長と掛け合うが、とりあえずここに入っててくれ。すまん。」
「分かっております。私の営倉入りは当然です。お気になさらないで下さい。」


命令違反とはいえ、結果として作戦の遂行に大いに貢献したとも言える遠沢に遠慮しているような有田に、遠沢は牢屋の中からでもはきはきと返す。本人はどうやら、何とも思っていないようだ。津村も、ショックを受けてるようでもなく涼しい顔だ。


「お前らも上に逆らってもたんかや…バカが」


自分に続いて牢屋にぶち込まれてきた若い連中と、その態度を、長岡は呆れた顔で見ていた。しかし、津村に関しては、艦を守った独断専行の攻撃を咎められたのだろう。あれによって命を救われた、少なくともそんなもの関係なかったとは言えないこの艦の年をとった幹部が、命を守る為に捨て身で向かった若い津村を命令違反だ何だと断罪するというのは、釈然としないものがある。
長岡の中で、軍隊なんてそんなもんだという思いと、それはあんまりじゃないかという思いが混ざり合う。そして、そんな中途半端な自分に嫌悪感が湧いた。



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中華人民共和国のその中枢は、共産党の中央政治局常務委員会である。共産党の一党独裁体制は既に80年近くの間中国大陸をその手中に収めていた。米ソの衝突のその隙を突いて
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