第六話 反撃
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手群が最後の一体にも伸びる。触手の一本一本の裏側には、夥しい数の牙が付いていた。それが無数に殺到し和気にとりつき、和気の表面を削りとっていった。
和気の衣服と共に全身の皮膚がめくれあがり、剥ぎ取られ、露わになったのは、皮下装甲が剥き出しになった鉄の人形の姿だった。
(でもあなたも、バケモノよ)
「……!………」
和気は目の前のおぞましいモノに対して、何も言えなかった。
触手の先が、鋭く尖り、刃物の形をとる。その無数の刃が、全方位から最後の和気に突き刺さり
地下五階には、遠沢以外に誰も居なくなった。
―――――――――――――――――
「エンジンのエネルギーがダウンしています」
「何?」
機関長からの報告に、田中は怪訝な顔をした。
「機関の故障か?エネルギー漏れを確認しろ」
「いや、それが…エネルギー漏れではなく、艦内の中の、いや、これは未確認なんですけど、あるようなんです、ダクトのようなものが。エネルギーがそのダクトを伝導しているようでして…」
機関長は、何だこれ、こんなのあったかなぁ何でこんな…と一人つぶやきながら首を傾げる。
どういう事だ…?と田中は内心つぶやくが、自分で確認したエンジンの、設計図との違いを思い出す。まさか、あれと何か関係が…
そう思った時には、艦が急激に減速そして方向転換し、揺れが田中を襲った。
「て、て、転舵なんて命じてないぞォ!」
焦った顔で脇本が怒鳴る。怒鳴られた操舵士の佐竹も怒鳴り返した。
「舵が効いていません!艦が勝手に方向を変えました!」
スクリーンの海域俯瞰図には、見た事もない画が映し出される。接近しつつある中共艦隊のマーカーの周りに、赤の囲いができる。
まるでそれは、ロックオンマークのようであった。
「砲雷長、何が起こってるか分かるか?」
「いえ、こんな事はマニュアルには…」
建御雷が止まったのが、スクリーンからも、感覚からも読み取れる。そして微妙に俯角と、横の角度を調整した。少し下に向いた角度で、建御雷はその艦首を中共艦隊へと向ける。
「艦首下方、開口しました!」
「開口?何を言ってる、一体どうなってるんだ?」
スクリーンの端が四角に切り取られ、艦外カメラの映像が映し出される。建御雷の、二つの艦首が、パックリと装甲を開き、そこから見えていたのは、大口径の砲口であった。
「何だ、これは…」
このミサイル全盛の時代に、新造艦に秘密裡に造られていた、二つの砲口。まるでそれは、前時代の大艦巨砲主義の具現化であった。
その砲口の奥が、鈍い光を放ち始める。
「機関からのエネルギーが、艦首部に集まっていってます!」
機関長が言った頃には、その光はまばゆいまでに膨れ上がり
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