第六話 反撃
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脇本が、泣きそうな顔で田中を見た。
「間に合いますでしょうか…?」
「……もう一発もらうかもしれんな…」
田中の一言に、CICの温度がまた一度、下がったように感じられた。幹部連中が息を呑んだのがはっきりと分かった。
「我々は、命令に従うだけです。」
本木だけは、その表情が全く変わらない。どこか、割り切った、吹っ切れたようにも感じられる態度である。
「…すまん。皆の命をくれ。」
田中はその視線を、冷たい床に落とした。
―――――――――――――――
「お前さんの言う事もな、もっともだよ。俺からこの件は内密にするように、艦長にかけあってみとくから、ちょっとの間だけ我慢してくれ。」
営倉までの通路の途中、温厚な顔をした名越船務長になだめられても、長岡は憮然として、何も話さなかった。艦内通路には、ダメージコントロールに駆け回る曹士達が溢れ、通路を行き来する彼らと何度も肩がぶつかった。
営倉として使われる小部屋に、長岡は自分から入った。部屋の隅に置かれた毛布の上にどかっと腰を下ろし、帽子を脱ぎ捨てて床に叩きつけた。
――――――――――――――――――
「……何を思うか……って…?」
痛ぶられ続けていた遠沢から、細い声が漏れる。常に表情が少なで尖って冷たい雰囲気をたたえる遠沢も、さすがに堪えているようだ。手足が見慣れぬ方向を向いており、唇と口内が殴打により切れ、口の端から血を流し、息も上がっている。そんな遠沢が、少し充血した目で右側の和気を見やる。和気達は、その手を止め た。
「何も、思わないわ。私を、こんなにして、それであなたの気は晴れるの?残り少ない寿命は伸びるの?奪われた地位は返ってくるの?」
「「「何ィ?」」」
和気が拷問の手を止めると、すぐに遠沢はいつもの尖った目つきに戻り、和気を睨んだ。
和気には、発した言葉の中身と同じくらいそれが気に食わなかった。こちらが手を止めるとすぐにこれだ。若い女なんだろ?女らしく、少しは許しを乞うだの、泣くだのしろ。
「「「お前、もっとズタズタになりたいみたいだな。」」」
遠沢を取り押さえている個体とは別の和気が、その懐から大ぶりのナイフを取り出す。大きく振りかぶり、遠沢の胴に突き刺した。
陸軍の濃緑色の戦闘服に、赤黒い血の華が咲く。遠沢に和気のような皮下装甲などはない。その刃は、遠沢の中に深く深く入り込んでいく。
「…………!!」
遠沢はぐっと息を詰めて、呻きをこらえる。全身にぐっと力を込める。刃を、受け止める。
「「「!?」」」
和 気は機械的改造を施された、複製人間にしてサイボーグである。単純な力も、常人とは比べものにならない。しかし、その
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