暁 〜小説投稿サイト〜
真鉄のその艦、日の本に
第六話 反撃
[3/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
つぼだ!統一戦線の思うつぼではないか!」

「ま た…またあんたぁそんな事を!あんたはこん発令所に篭ってるけんそんな事が言えるんですよ!今第三甲板は地獄です!五体不満足になった者も居れば、体に火 がついてのたうつ者も…いや命があれば良い方だ。もはや人の形も失ってただの肉の塊になっちまった者も居るんですよ!何でここまでされて、平気で居れるのんですか!?艦と乗員を守るのが艦長でしょう!?」

「軍人が感情で動いてはいかんのだ、冷静になれ長岡!確かに艦長の仕事は艦を守り乗員を守る事だ、しかし我々皇軍の使命は我々自身を守る事ではない、日本を守る事だ!今ここで我々が撃ち返して、我々自身が守られても、その後日本として我々以上のものを失う事になれば本末転倒ではないか!今の日本は中共との武力 衝突になど耐えうる体力はない、耐えれたとしても被害は絶対に少なくない!例え我々がここで死のうとも、それ以上の被害を防ぐ為なら仕方がないのだ、我々だけの犠牲で済んだという事なのだ!軍人ならば耐えろ!耐えて国の為に死んでみせろ!!」

「とにかく争いを避けて避けて、ぶつかれば必ずこちらが折れて、耐えて、細々と、細々と…!そげんして生き永らえる事しか出来なくなっちまったけん今の日本はダメになっちまったんだ!あの戦争、80年前のあの戦争で最後まで戦わんでから、ずっと日本はそうだ!恥も誇りも、戦う姿勢もなくなっちまった!戦争を避けて人が死ななんだらそれで平和なんかや!?それで国って呼べるんかや!?」

不意に、長岡の両腕が背後から掴まれる。長岡がぎょっとして振り向くと、自分より遥かに頑健な体格の本木が、長岡を拘束していた。

「まー(長岡の愛称)、落ち着きんさい。今それ言っても無駄じゃけ。」

友人に冷めた目で見られ、長岡の腹の底から湧いて出てきたものが、ぷつっと途絶えた。熱が冷めた。

「副長、発令所からの退出を命じる。船務長、この男を営倉に閉じ込めておけ。」

田中の命令で、船務長と数人の曹士が、長岡に銃を向ける。本木が自分の体を手放しても、長岡は何も抵抗せず、呆けた顔をして、彼らに促されるままにCICから出て行った。

長岡が居なくなったCICで、田中はふう、とため息をつく。帽子をとって、頭をかいた。
出て行く長岡の背中を無表情で見送っていた本木が、田中に向き直る。

「艦長、支援ヘリを失った中共艦隊は、先ほどからこちらに向かって前進してきています。ヘリの支援を使わない直接照準での攻撃を意図しているかと。」

田中は、帽子を被り直した。やや、疲れの色がその顔には滲んでいる。

「山犬と、機甲部隊に撤退命令を出せ。東海岸に早急に集結させろ。中共艦隊がその射程にこちらを捉えないうちに撤退する。陸上部隊を収容次第、全速でこの海域を離脱する。」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ