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真鉄のその艦、日の本に
第五話 蹂躙
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はそう高くはない。支援ヘリからの情報伝達で艦自身の射撃レーダーの範囲以上の距離から攻撃しているのだが、追尾誘導できるのは一斉に4基が限度のはずだった。
スクリーンの光点の軌道を見ると、先に発射した20基は、回避行動により位置を変える建御雷に合わせてそのコースを変えてはいなかった。

「現在飛翔している迎撃噴進弾を全て自爆させろ!先の20基は囮だ!追尾誘導されてるのは後の20基だ!」

砲雷長の本木が、目を見開いた。建御雷のCICが凍りつく。
航空隊が後の20基の迎撃に向かう。全てを撃墜する事はできない。
建御雷は先ほど撃った20基を自爆させ、射撃レーダーの照準を設定し直して、もう一度対空噴進弾を放つ。しかし、プロセスに無駄が生じた為、ややその迎撃に遅れと隙が生まれた。

建御雷の対空ミサイルと、中共艦隊の対艦ミサイルがすれ違う地点。微妙な照準のズレが、亜音速ですれ違う物同士をぶつけるという行為においては命取りになる。
幾つかの対艦ミサイルが、対空ミサイルをかわして、防衛ラインをすり抜けていく。

「敵噴進弾3基、なおも直進!」

建御雷は火砲による迎撃を開始する。艦左舷上下に設置された速射砲。艦左舷から飛来するミサイルに対し、次々と弾を撃ち出す。
その弾は、ある地点で大きな火球となり、強力な熱放射を起こす。一発の攻撃範囲が広い、焼夷榴弾三式弾だ。これで熱のベールを作って、対艦ミサイルをせき止めようとする。
しかし、一発のミサイルは、その熱放射のベールをかいくぐって、さらに建御雷に向かい直進してくる。

「チャフ展開、対空防御!総員衝撃に備えぇーー!」

田中がマイクに叫び、自身も身を床に伏せる。
CICの全員がコンソールや床にうずくまり、着弾の衝撃に備える。艦内各部で、同じように全員が身を伏せ、何かにつかまり、頭を守る。
建御雷はアルミ泊を放出しミサイルの撹乱を試みながら、近接防御火器による最後の迎撃を行う。近接防御火器…20mmバルカンは一分に3000発のペースで弾を打ち出し、弾幕を張る。
しかし、その射程は僅か数km。
ミサイルにその火線が対峙するのは僅か数秒。
その火線は、建御雷総員の祈りを込めたにしてはいささか頼りなく


のたうち回るように回避運動する建御雷の左舷のどてっ腹に、中共艦隊のただ一基のミサイルが飛び込んでいった。



――――――――――――――――――

「中共艦隊に建御雷を襲わせて何がしたいの?もうこの根拠地はどのみち破滅よ。建御雷が堕ちたくらいではもうどうにもならないわ」

遠沢に睨めつけられ、銃口を向けられても、和気は愉快な顔をするだけである。

「「「この根拠地は終わるな。しかし、代わりに始まるものがある。その為に必要な事だよ。」」」

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