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真鉄のその艦、日の本に
第四話 激突
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第四話 激突

「レーザー通信、津村機より。艦長!中共艦隊です。国境ギリギリの所に展開してきています。」
「何?」

通信手の中野によって、津村機からの報告は建御雷のCICにも伝わる。建御雷のCICは敵機動甲冑部隊の壊滅を受けてやや安堵した所もあっただけに、唐突な、そして意外な報告に、また緊張が走る。

「対抗電子機器、強度落とせ。長距離電探作動。」

田中の指示で、統一戦線からのミサイル攻撃に備えて最大威力で作動させていたレーダージャミングによる電子戦の強度を落とし、建御雷自身の長距離レーダーを有効にして、中共艦隊の動きを探る。

「巡洋艦5、中型の空母1。杭州級、そして江蘇級です。10ノットの速度で、こちらに進路をとっています。距離は26キロ。」

レーダー手の山本が伝える。CICの大型モニターには、二神島海域の地図に、偵察の雷電改部隊、そして中共艦隊を示す光点がゆっくりと動いている図が映し出される。

「これはまた、面倒臭い時に…」

思わず本木から言葉が漏れる。
元々単艦での攻略戦というのも、艦隊を動員して中共を刺激しない為、隠密に処理する為だが、思いのほか中共艦隊が建御雷の作戦行動に早く感づいた。よりにもよって…の思いは募る。中共艦隊の出現により、CICにも不穏な空気が垂れ込める。

「狼狽えるな!」

艦長席の田中は帽子を被り直しながら、浮き足立ち始めたCICの艦幹部を一喝する。

「こちらに侵攻している訳ではない、あくまで中共側の領海に展開しているだけだ。我々は自国の領海で作戦を行っているだけだ。落ち着いて目の前の任務に集中しろ!」

艦長の隣に立つ長岡は、そうだそうだと頷く。ここは中共との国境とはいえ、ギリギリ日本側。いくら中共が艦隊を展開して威圧してこようと、こちらが国境沿いで軍事行動を行っている、ただそれだけで安易に戦闘を開始する事はできはしない。それが許されるような国際社会ではないはずだ。

そうだ、落ち着け。あの艦隊の噴進弾がこちらに飛んでくるなんてこと、あるわけないだろ。
長岡は自分に言い聞かせる。どうにもざわつく胸を抑えようと、息をふう、と吐き出した。


―――――――――――――――――

どん、と音を立て、二神島地下五階最深部の発令所の扉を開けた山犬が突入する。それぞれが違う方向に銃口を向け、上下左右に敵を警戒する。しかし、発令所には既に頭を撃ち抜かれた死体が転がっている。自決したのだろう、死体の手には銃が握られている。

「!」

しかし、その発令所の1番奥の席、社長イスである、それに腰かけた男にはまだ息があった。目に光が宿っていた。その目が、山犬兵士を見ていた。

銃声が響き渡る。銃声が連続する。鮮血が薄暗い発令所に飛び散った。



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