第三話 進撃
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げてきた「山犬」といえど も、何も隠れるものがない200mの通路を正面から掃射を受けながら走り抜けるのは難しい。統一戦線側も、遠距離では重機関銃による斉射、これをかわして 近距離に入り込んできたら、ショットガンによる散弾攻撃でミンチにする。そのパターンの迎撃で何度か突撃を試みてきた山犬部隊は、死体ではなく肉塊になっ ていた。本来、基地攻略戦は守る方が圧倒的に有利である。驚異的な身体能力でその差を埋めてきた山犬も、基地最深部を目の前にして足踏みを続けていた。
「おいお前ら、手こずってんな」
「は、隊長…」
階 段手前の通路に差し掛かる曲がり角で、山犬兵士達が立ち往生している。そこに印出がやってきた。基地最深部に至るこのルートを残し、綺麗に「掃除」してき たのである。黒の戦闘服には所々血の飛沫が付着していた。1人20殺、それも冗談ではないくらいに殺して殺して殺しまくった。もうこの基地に残っている人 間は、この奥の統一戦線兵士と、「山犬」部隊だけである。他に抵抗を諦めて基地から逃走する輩も居たが、それらはとりあえず放っておいている。
「やられたか?」
「は、12名が…」
「山田井野元田口西嶋佐田宮地大川芝楢崎西原岡崎下田か」
印出は、にやけている顔をきゅっと引き締めた。神妙な顔を作っている。そして、12名の亡骸が倒れているであろう通路に向かっておもむろに叫び始める。
「諸君!君達は勇敢だった!最後までよく戦った!陣地に引きこもり一方的に撃ちまくる敵に対し、よく生身で立ち向かっていった!諸君らは山犬である!そして山犬は永遠なり!よって諸君も永遠である!さらば兄弟!」
印出の声は、200mの廊下にこだました。向こうの陣地から、ざわめきが聞こえてくる。
「何だ?」「狂ったのか?」「山犬?山犬といったか?」
それらを印出は気にもとめずに、部下に向き直る。
「で、どうすりゃいいんだ?」
「ここを曲がった通路は200mの直線で、通路を突っ切った大広間に敵は陣地を作っています。大型機銃が5、ショットガンは10は下りませんね。かなり横幅の広い通路ですが、相手の戦力も相当です。」
「他の階段全てベークライトで固めてやがった。奴ら、全く頭を使えねえ訳ではなさそうだな。」
部下は、ニヤと笑いながら「ここは、隊長が…」と耳打ちする。印出は、目を?いて「はぁ!?」と反発する。しかし、印出の口元も笑っている。
「おめーらなぁ、普通こーいう時は部下が『我々が血路を開きます」とか言って尊い犠牲になった後を隊長が行くってのがスジだろーがァ!」
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ〜」
山本五十六の名言を引用して茶化す部下に対して大仰に手を挙げて印出は嘆く。
「ああ、俺はアレだ、悲しい。
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