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真鉄のその艦、日の本に
第三話 進撃
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放たれた徹甲弾は、飛翔し、木々の間を芸術的に縫い、遥か彼方の密林の中を動く統一戦線の機動甲冑をあやまたず貫いた。

「あと、17。」
<なぁ、遠澤、時々俺はお前が同じ人間じゃないんじゃないかって不安になるよ>

呆れるほどに正確な、そして人がやるものとも思えない遠沢の射撃に、有田は通算何度目か分からないため息をつく。

「敵も機動甲冑を出してきたぞ。全車、警戒、会敵に備え!」

―――――――――――――――

「んふふ、始まってる始まってる」

印出は海中から顔を上げ、磯に体を引き上げた。特殊部隊用の隠密行動に適した体に密着した黒の戦闘服、体のあちこちに武器を携え、背中には小さなバックパッ ク、これがこの大きさでありながら潜水ボンベだった。「山犬」に東機関は、これはまあ色々と便利なものを持たせてくれるのだ。ずっと遠くの密林で聞こえる 銃声を聞き、印出はニヤニヤと、顔をさらに歪める。

「俺達も、殺るとしますか」

印出の背後の海面から、70匹の山犬達が顔を出した。

――――――――――――――――――――

「どうなるんだろなあ俺達」

統 一戦線基地地下施設への入り口は、そこかしこにある。岩盤をくり抜いた人工の洞窟の入り口である。その入り口の一つに、歩哨が二人立っていた。訪ねて来る 者も居ないこんな無人島の基地では、出入り口の歩哨など万に一つのお客様だろうが、しかし、今の状況では、その「お客様」が島の反対側から攻め込んできて いる。こんな事はかつてない。言葉を発した男は、まだ二十歳前後の若者である。それを聞く方も同じくらいの年齢だ。人生のあらゆる選択肢の中から、世界の 支配者に対してのレジスタンス活動を選んでしまった、勇ましく無鉄砲で恐れを知らない男たちだ。

「殺されるか、拷問されるか、とにかくロクな目には遭わねえだろーなー」
「ま、大丈夫だよ、こっちは機動甲冑が18機、相手の三倍らしいぜ。心配すんなって」

そう言って、片方が、隣を振り向いた時、目の前にあったのは、くしゃくしゃの髪と、面皰が目立ち面長で、人をバカにしたように笑う顔。

「」

彼 の頭がその状況を飲み込む間もなく、印出の手はその口を塞ぎ、小型ナイフを、彼の首筋に突き立てる。頚動脈がぶち切れ、ピューーッと血が噴水の如く飛び上 がる。もはや彼には混乱する間もなかった。彼の視界が閉じていく。彼は最後まで恐れを知らなかった。目の前の、同じ日本人はそれすらも教えてくれなかっ た。

―――――――――――――――――――

「基地各所から通信が途絶しています!」
「第一発電所からの電力供給止まりました!」
「地下一階部分に火災が発生しているようです!」

基地最深部、地下五階の発令所では、蜂の巣をつついた騒ぎにな
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