第三話 進撃
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う。
「一番隊、突入位置へ」
編隊の先頭を飛ぶ森機が翼を帰して高度を下げていく。それに追随する一番隊の各機、その姿を上空に留まる津村以下二番隊の各機が見送っていた。
10機の一番隊雷電改が、海面スレスレを這うように飛ぶ。上空からそれを見ると、まるで10機のエイが凄まじい速さで滑空しているように見える。
「敵電探捕捉範囲、通信やめ、電探停止!」
レーダーや通信による電波発信を止め、息を殺して二神島敵基地のレーダーの捕捉範囲の切れ目の中に突入する。さて、本当にこのコースは死角なのか、否か、この一直線40キロの先に待ち受けるのは、栄光かまたまた地獄の業火か。
しかし、今は、信じる以外ない。
「……いくぞっ」
森がスロットルを目一杯に引き込み、雷電改のエンジンが唸りを上げ、機体が軋み、急激な加速に体がシートにドンッ!っと押し付けられる。ほぼ同時に、全機のエンジンが目一杯にふかされ、その鉄の翼を加速させた。
キャノピーの外の海、その波間が凄い勢いで後ろに流れ、海面に風圧で白い跡がつく。
正面に小さく見えていた「黒点」、二神島が、一気にクローズアップされていく。
敵の迎撃は?来ない。敵の対空ミサイルは来ない。まだ来ない。
「よーし!」
十分接近して、森は機首を上げ、高度を上げて急減速。機首が折り曲がる雷電改独特の変形機構により、機体全体がフラップとして空気抵抗を受け減速。追随する一番隊全機が同じ行動をとる。同時に、雷電改全機の射撃管制レーダーが解禁される。敵のレーダー手からしてみれば、いきなり10機の敵機が出現したように 思えるだろう。しかしもう遅い。鎌は目前で振りかぶられた。
バシュ!!
一番隊全機の機体下部弾倉が口を開け、無数の対地ミサイルが撃ち出される。自動追尾のそれは誤りなく、わずかに水平飛行した後、ほぼ直角に急降下し、草木に似せ蔦を被せて隠蔽した二神島敵基地のレドームに殺到した。
鎌が、振り下ろされた。
爆発。続けざまの爆発。火に染まる二神島の上空を、念の為のチャフを展開しながら、一番隊全機がすり抜けていった。
「……やるぅ〜〜〜」
後方上空でその様子を見守っていた津村がヒュウ、と口笛を鳴らす。たった数十秒間の出来事。しかし、これが航空隊の仕事。この数十秒間にパイロットの意地が詰まる。
<敵電探への対地攻撃は成功!繰り返す、攻撃は成功!>
森からの通信を聞いた建御雷戦闘指揮所では、「おお!」と喜びの声が上がる。
すかさず、艦長席の田中が厳格な声で艦内マイクに吹き込む。
「機関全速前進。これより二神島への上陸作戦を開始する。」
―――――――――――――――――
レーダーが無力化された二神島に、全速で建御雷が接近する。東機関のデー
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