第三話 進撃
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はないにせよ、とても70人で対処できる数ではない。爆弾をし掛け、地下要塞の内部から爆破するという作戦だが、長岡はそこで印出が言った言葉が気にか かった。
「1500人…一人20人殺せば……」
まさか本当に20人殺すつもりでいるのか、それとも、あの作戦会議において笑えもしない冗談を言ったのか。
死地に直接赴く人間の気持ちは、敵と遠く離れて戦闘指揮所に篭る自分には、想像もできないものなのかもしれない。長岡の視線の先では、印出がずっと同じ笑みを顔に張り付かせたまま、箸を動かしていた。
――――――――――――――――――
翌日正午、建御雷は作戦行動を開始した。
二神島までは、最短距離で行けば半日もかからないが、申し訳程度に三日間集中的に訓練を行ってから、進軍を開始したのである。
この三日間の訓練は、非常に効率のいい訓練となっていた。いつ来るか分からぬ敵への対処ではない。これから確実に戦闘が待っている中での訓練だからだろうか。三日間、たった三日間だが、多少は練度も向上した手応えはあった。戦闘にたえうる程度かは、全くの未知数であるが。
格納庫では、航空隊が慌ただしく集合している。青の航空服の肩には荒鷲のエンブレム。生命維持のバックパックを背負い、フルフェースのサンバイザー付きヘルメット片手に、格納庫で円陣を組んでいた。
「最終確認だ。控室で言った通り、二神島南西部、敵電探の死角より高度100で進入、敵電探及び噴進弾設備に対地噴進弾による水平爆撃を加え離脱する。これは俺の一番隊が引き受ける。二番隊は後方で上空警戒にあたれ。理解してるな?」
「「「ハッ!」」」
「よし、出撃用意!」
森の短い確認が終わり、総勢20名のパイロットが、整備を終えた鉄の翼、それぞれの自機の元に駆け寄り、そのコクピットに体を収めていく。口々に、整備士が激励の声をかけ、パイロット達はそれに応える。
森は梯子をよじ登り、その大きな体を小さな、そして硬いシートに収め、キャノピーを閉めた。ここからはコクピットは自分だけの空間、この戦闘機の翼は森自身 の翼である。手足は計器ペダルそして操縦桿と一体化する。パイロットは戦闘機の最も高価な部品、その体と機は一つ。次々とデジタルコクピットのディスプレ イ達に光が宿っていき、船のものとは違う、軽くそして荒々しいエンジンの唸りが段々とその音量を増していく。その時、不意に通信の呼び出し音がヘルメット 耳のスピーカーから鳴った。格納庫で隣に位置している津村の機かららしい。
「どうした津村?腹でも下したか?」
<僕やないんですね、爆撃担当>
「何だまたそれか」
津村は作戦会議から、自分が隊の露払いを務めると意気が上がっていた為に、森自らが先陣を切って爆撃する事に今ひとつ納得がいってない様子であった
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