第三話 進撃
[12/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
れて死んでいた方が幸せだったろう。一瞬で死に切れずに、倒れ伏して喉からヒュー、ヒューと呼吸の音を鳴らして自らの血だまりに顔 を埋め、苦しみの声を上げる事も許されずに死んでいく。
「逃げる奴ぁ皆国賊だ!逃げない奴ぁよく訓練された国賊だ!死んだ国賊だけが良い国賊だぁああああ!!」
印出の愉悦の混じった声が、悲鳴と銃声、硝煙と血の匂いに支配された地下に響く。
山犬達が、骸を踏み越えていく。靴音は、血で、びしゃびしゃと、水音が混じっている。
もう抵抗する者はこの地下には居ない。した所で、この者たちを止められる者は居ない。
進撃。国家を守る、法に守られたならず者達の進撃。その進撃は、ついに二神島の地下五階、最深部にまで達する。
―――――――――――――
「さすが、東機関、思っていた通りの暴力装置どもを送りこんできたな」
地下五階の発令所には、基地指揮官が一人。発令所には、これまた死体、死体。四階の陣地が破られた時点で、発令所要員は全員、どこにも逃げ場のないこの地下での自決を選んだ。この指揮官一人を除いては。
「殺すのが楽しみになってるのか、だからこんな所までノコノコと来てしまうのか、それでは猿じゃないか、自慰を教えられると血を噴き出すまで続ける猿と同じだ」
そうぼやき、司令官席に深く腰掛けため息をついてるのは、あの与勝基地を強襲した機動甲冑部隊の指揮官
和気その人であった。
――――――――――――――――――――
「!!」
目の前で、叢原火が最後の敵機動甲冑を破壊した瞬間、遠沢は体が粟立つ感覚を覚えた。ぞくぞくと、寒気が背筋を撫でる。遠沢は、唾を飲み下した。この感覚の出処を、遠沢は知っている。
<これで全機、18機だな?山犬からの報告は?まだ基地爆発は確認されていないな?>
操縦席から、部隊全機への有田の通信が入る。二神島の西側は、最初の航空隊の爆撃による火災で煙がたなびいてはいるが、未だ予定されていたような爆発は起きていないし、山犬からの連絡も入ってこない。
「有田大尉。」
<ん?何だ?>
「少し、勝手を許して下さいますか?」
<軍は勝手を許す所ではないよ。>
「…必ず戻ります。戻らなければ、死んだと思って下さい。では」
遠沢は頽馬の射撃手席のハッチを開ける。多機能ヘルメットを脱ぎ、シートベルトを外して、携帯通信機と拳銃をポケットに押し込んで、頽馬の射撃手席から、地面に飛び降りた。
<おい!遠沢!!遠沢!…法代ォ!どこに行くんだ!?>
射撃手席では、慌てふためく有田の声がマイク越しに響いている。それを尻目に、遠沢はごめんなさい、と心の中につぶやいて、森の中へと走っていった。
――――――――――――――
「結局、機動甲冑部隊
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ