第二話 不穏
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表情が更に幾分強張った。ごく、と唾を飲み下した。
「まぁ、あなたの手を借りなきゃいけなくなるかは分からないけど、私の大事な部下達よ。何かあったら頼むわね」
「…心得ておきます。」
「もしそうなったら、あの半島での件みたいなドジは踏まないように気をつけてね」
「っ」
遠沢は唇を噛んで、目線を伏せた。上戸はその姿を見て、ふふん、と鼻を鳴らして笑った。
「じゃあね。久しぶりに会って安心したわ。あまり変わってなくってね。相変わらず可愛いわ。…頼んどくわよ」
上戸は踵を返して、歩き去って行く。
遠沢はその背中に敬礼すると、目線は伏せたまま、自分もさっさとその場を離れていった。
――――――――――――――――――
「機動甲冑、ねぇ」
「えぇ、ああいう人型兵器の事を我々ではそう呼んでいます。」
建御雷の格納庫では、有田が本木に機動甲冑なるものの説明をしていた。目の前には、「90式戦車」から変形した状態の日本初の機動甲冑、「叢原火」がその姿を見せていた。
「しかし、人型にわざわざする必要なんてあるん?こんなの整備に手間がかかっちまうし、何より高いじゃろうが」
「実 際、世界最強の米陸軍は開発を行っておりません。開発する必要もないのでしょうね。この叢原火だって、さすがに戦車100輌の物量で攻められると苦しいで すし、米陸軍はこんな破天荒なモノ作るより戦車沢山作って兵力で押した方がコストにも見合うでしょう。ソ連、ナチスドイツや我々日本が一輌の性能を上げよう と苦心したその成果がこいつらです。ただ、動きにバリエーションが出るんですよ。戦術に幅が出る。運用によっては相当力を発揮するって事です。」
本木はその説明に、納得できるような気がしないでもなかった。古来より人は獣を狩ってきたが、獣より移動速度が速い訳でも、力が強い訳でもない。それでも人 が獣達に勝ってきた、そうして今まで発展したきたのは、それは動きにバリエーションがあるからだ。戦術に幅があったからだ。それと同じようなものかもしれ ない。戦車は動いて撃つだけだが、こいつ…機動甲冑は飛び道具だけでなく、近づき、飛び上がり、拳を叩き込む…そんな事もできるのかもしれない。それをさ れた時に、戦車の火砲だけでそれに全て対応できるのかと言われれば、そうでもないように思えてきた。
「ま、米国の目を欺く為こんな風に普段戦車の形でごまかすようにしたもんだから、整備兵も大変ですねぇ。」
「これもすげぇ技術じゃけどの。せっかくの日本の技術も表に出ず終いじゃの」
叢原火の整備に悪戦苦闘しているように見える、建御雷の整備兵の様子を見て有田と本木はため息をついた。
「おぉい本木ィ、ここに居ったんかいや!」
そこに、福岡司令部から戻ってきた長岡がやって
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