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真鉄のその艦、日の本に
第二話  不穏
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言い方に問題はありますが、あなた方がこの作戦に当たる理由としては概ねその通りです。統一戦線が所有している機動甲冑は、こちら側には、建御雷陸戦隊に配 備した分しか用意できておりません。また、通常兵力を多く投入する事になると、二神島は中共との国境付近、無用に中共を刺激する恐れもあります。増員とし て、東機関隷下の特殊要撃隊を70名つけます。自分の部下ながら、百戦錬磨、一騎当千です。この部隊と、建御雷の機甲兵力、この兵力で何とか、二神島の統 一戦線を排除して下さい。」

白川とは違って、上戸の頼み方には誠意が見えない事もない。それに、軍である以上、命令は命令である。最初から、従わないという事はできようもない。命令を受けて働く側にできるのは、「具申」のみ。意見する事だけだ。


「…了解しました。弾薬、燃料の補給が出来次第二神島へ発ちます。あと、上戸局長……」

田中は、卓上に置いた白の海軍帽を手にとり、年に見合って後退している頭に被り直した。

「"殲滅"でよろしいんですね?」

上戸は頷く。

「はい。1人残らず」

田中は息をつき、「分かりました」と言うと席を立つ。長岡も続いて立つ。

「作戦内容、受理致しました。失礼致します。」

二人揃って敬礼し、部屋を出て行った。

――――――――――――――――――


建御雷では半舷上陸となっており、福岡駐屯地での物資補給の間、補給科以外の曹士や士官はその半数が基地内の娯楽施設などを利用していた。

「!!」

遠沢も上陸許可に従って、基地内の書店に行っていた。本を読むのは、幼い時からの趣味である。船の上では、暇を潰すものも欲しかろうと、手提げ鞄に買い込ん だ。その帰り道に、ドキッとして振り向いたのは、その良すぎる眼が視界の端に、見知った顔を捉えたからだ。黒のパンツスーツを着込み、長い髪を上段にまとめて、そして女にしては背が高い。遠沢は足を止めて、その人影が近寄ってくるのを待った。

「お久しぶりです、上戸さん」

敬礼した遠沢を、上戸は手で制した。

「よしなさいよ、そんな他人行儀。そんな間柄だったかしら?」

表情少なな遠沢だが、上戸の前では、緊張して見える。少し強張ったように見える。一方で、上戸はさっきの会議室での雰囲気に比べ、随分ゆったりと余裕のある顔をして長身から小柄な遠沢を見下ろしていた。

「陸軍はどう?元気にやってるかしら?」
「はい。居心地は、悪くはありません。同僚は女の私にも親切です。」
「そう…あの時に比べて随分生き生きしてるわね、そういえば。」

二人の間にひゅう、と風が通り抜けた。

「……なぜ、上戸さんがここに?」
「…仕事よ。今度の建御雷の作戦には、ウチの部下も相当数参加するから。」

遠沢の
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