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真鉄のその艦、日の本に
第二話  不穏
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人物が立っていた。片方は、陸軍の 濃緑色の制服。階級章を見ると、准将らしい。小太りで、髪は相当後退したメガネの将校だ。どうにもただのオヤジに見えないのは、メガネの奥の小さな目がど うにも油断できない輝きを放っているからだ。
その隣に立っているのは、黒のパンツスーツを着込んだ女だ。背が高く、すらっとしている。
長い髪を一つにまとめて、肌は白く、唇が厚く艶かしい、細面の女だ。この陸軍司令部に似合う人物には見えない。

「建御雷艦長、田中です」
「副長の長岡です」

田中と長岡は敬礼。今日は二人とも、純白の制服を着込んでいる。

「陸軍技術本部部長の白川です、どうぞよろしく。」

技本か…と田中は思った。なるほど、白川の見た目はいかにも技術畑の人間だ。

「東機関局長、上戸です。よろしくお願いします。」

こ れには田中は驚いた。この女、東機関だったのか。東機関とは、前大戦中に作られた日本の諜報機関である。アメリカCIAとは違い、その存在は殆ど表に出る 事はなく、本拠地すら分からない。軍属の田中も、東機関の関係者に会うのは初めてだ。その局長が、こんな若い女とは。まだ30は越えてなさそうである。

「あら、驚かれてますか?」

上戸は上品に笑みを見せた。

「スパイにとっては、女である事も武器になりえますので…」
「がははは。可愛い顔して恐ろしい事を言う。」

白川は対照的に下品な笑い声を上げた。
田中と長岡は少し引きながら、上戸に促されるまま席についた。

「我々に任務とは?それも中央司令部直々の」

「単刀直入に言いますと、反乱軍の殲滅です。二神島まで出向いて頂きたいのです。」

答えたのは上戸だった。

「世界抗米統一戦線の本拠地が二神島にあります。日本の反米意識の高い若者を引き入れて、無視できない勢力となりつつあります。
潰して下さい。徹底的に。」

世界抗米統一戦線は、アメリカに占領された旧ソ連人民を中心に組織された世界最大の反米テロ集団である。ソ連軍残党なども多く参加している為、ただのゲリラ とは違う重火器なども揃え、またアメリカに反感を持つ企業、国なども世界には山ほどあるので、それらの援助を受け勢力を更に伸ばしつつある。この日本でも 大きな動きこそ見られないが、反米感情に付け込まれた若者はここ日本でも少なくはないと見られていた。

「彼らはまず、現体制を崩して革命政府を作り、中共などの国と組んでの米国討伐を目論んでいます。そのような大国と組んだところで、日本がどうなるか。体の良 い駒として使い潰されるという事も想像できない盲目な連中です。先人が築き、守ってきたこの国土、歴史、我々の日本を、そんなバカな若造に渡す訳にはいき ません。破防法を適用し、これらを抹殺します。」



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