第百三十四話 信行出陣その五
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ここで彼等はこのことについても話した、それは何のことかというと。
「しかし公方様だけは」
「そうでありますな」
「右大臣殿が退き随分と上機嫌です」
「たまに負けてもらっては困るとまで仰っていましたぞ」
「今や幕府は織田家あってのものだというのに」
「それがわかっておられぬとは」
彼等は皆わかっている、織田家からも禄を貰っていて今も織田家の青い服を着ているからだ、だが義昭だけはなのだ。
「困りましたな」
「これは危ういですな」
「全くです」
「天海殿と崇伝殿がまた色々と吹き込んでいますな」
「お二人を何とかして公方様から引き離したいですが」
「それも難しいですぞ」
二人の僧達のことがここで話される。
「最早完全に公方様の傍にいつもいます」
「そこから離れませぬ」
「公方様も全幅の信頼を寄せておられますし」
「それに乗じて吹き込むとは」
「厄介ですな」
「どうすべきか」
深刻な顔で話すのだった。
「崇伝殿も南禅寺の住職といっても怪しい方ですし」
「どうも今も南禅寺にはよからぬ者が多く出入りしておるとか」
「やけに暗い色の法衣の僧達ばかりですし」
「あれが名刹南禅寺とは」
「変わったものです」
「天海殿もですぞ」
崇伝の次は天海だ、彼はどうかというと。
「何でも東国におられたとか」
「かなりのご高齢とのことですが」
「百歳を超えておられると聞いていますぞ」
「いや、百歳とはまさか」
「そこまでは」
七十で古稀だ、それで百歳を超えるとなるとだ。
「有り得ぬのでは」
「幾ら何でも」
「しかしですぞ」
「それはまことというのですか」
「百歳を超えていると」
「そうなのでありますか」
「その様です」
異常な長寿だ、それだけでだった。
「お二人共怪僧ですな」
「そうとしか呼べませんな」
「どうも裏切った浅井家にも延暦寺から怪しい僧の方が入ったとか」
「浅井家にもですか」
「あの家にも」
「その様です」
幕府にもこの話が届いていた。
「何でも無明、そして杉谷善住坊とか」
「比叡山の僧ですか、どちらも」
「そうした僧もいるのですな」
「あの寺はとかく大きいですからな」
ただ古いだけの寺ではない、多くの荘園やそれを守る僧兵達も揃っている、この寺は巨大な武を持つ勢力でもあるのだ。
無論普通の僧も多い、その彼等の中にはというのだ。
「そうした僧達もいますか」
「その二人の僧達も」
「そして浅井家に入ってですか」
「何かをしていますか」
「その様です」
こう話す彼等だった。
「では浅井家の急な裏切りもですか」
「その方々が関わっていますか」
「若しやと思いますが」
「そうなのでしょうか」
「そうやも知れませぬな」
こう話されるのだ
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