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真鉄のその艦、日の本に
第一話  接敵
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。ここから艦砲で迎撃する。主砲に三式弾を装填しろ。」

慌ただしく動き出したCICに、やや遅れて入ってきた田中が入ってくるなり、別の指示を出した。本木はその指示に目を丸くする。

「三式弾でありますか?熱放射が拡散する仕様ですので、ここで使えたものでは…」
「狙って当たるような動きを敵はしとらん。地表の建物の間を縫うように走る人型兵器、射撃電探の自動照準も当てになるまい。艦載機は出撃コースがここでは確保できん。多少基地を灼いても、三式弾で広範囲に薙ぎ払うのが正解だ。」

田中はきつい目で本木を見据えた。

「やれ!」
「は、ハッ!」

本木が砲雷科員に指示を通していく。長岡は、体がざわついた。敵の機動兵器に踏みにじられてるその側には、抵抗する味方陸戦隊も居るだろう。負傷して動けない兵も居るかもしれない。それらも一緒に焼き払うのだろうか?
勿論、友軍に警告は出すだろう。しかしそれで焼き払うまでに彼らは逃げ切れるのか?
長岡はゴクリと唾を飲み下す。

この艦は守られなければならない。
日本の技術の粋を集めた末に完成した艦だ。
その為には

陸戦隊の歩兵のような兵卒の犠牲は仕方が無い。


その時、通信手が声を上げた。

「艦長、有田大尉からです。」

中央から来たらしい、いかにも水兵には見えない女性士官に、田中は回線を開くよう命じた。

<こちら、建御雷陸戦隊の有田です>

相変わらずのかすれ声の有田である。

<我々機甲部隊は発進用意ができました。艦長、出撃許可をお願いします>
「やれるのか?敵は、未知の人型兵器だ。我々の常識を超えている。」

有田は少し間を置いた。

<敵が強力であろうと、戦車乗りとしては今の状況は放っておけません。>
「君らは陸軍から借り受けた戦力だ。失う訳にはいかん」
<今は陸軍ではなく、艦長の部下です>

田中は、納得したように笑って頷いた。

「よろしい。出撃許可する。」
<ありがとうございます>

そして通信は切れた。長岡はCICに立ち尽くしながら、有田と言葉を交わした時の事を思い浮かべる。気弱そうな男だった。本木にその時の事を愚痴ったような気もする。しかし、今は、自分より余程役に立つだろう。。自分は安全なCICで、何もできない。今ではあのかすれ声が妙に立派に思えてくる。

「時間を稼いでくれるかもしれん。エンジン始動急がせろ。」

帽子をかぶり直しながら、変わらず冷静な田中が言った。
長岡は、ハッと我に返って、新しく指示を通していった。


―――――――――――――――――――――――

一体の人型兵器の機銃が火を吹き、また施設に隠れて抵抗する兵士が吹き飛んだ。その一機に、別の一機が近寄ってくる。

<圧倒的で
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