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真鉄のその艦、日の本に
第一話  接敵
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「……」

遠沢は実に興味が無さそうなすました顔で、しかし直立不動の姿勢だけは崩さない。

「……」

長岡の方が、この二人と向き合うのが気まずくなり、「それでは、失礼」と言い残して、とりあえずその場から離れていった。




――――――――――――――

「って訳なんだわー」

場所は変わって、ここは日本初の空中戦艦「建御雷」の艦内である。薄暗い艦内通路を歩きながら、長岡は本木崇史砲雷長に、先ほど会った陸軍士官の印象を話していたのだった。

「まあ、予想できた話じゃろ。」

本木と長岡は同じ中国地方の生まれで、年も同期である。防大の野球部出身で、建御雷への配属が決まり、一年の事前研修を積んで、今では建御雷幹部の中では1番仲が良い。

「陸軍が海軍主体のこの計画にマトモな奴よこす訳がないけ。気弱な出世できそうにもないおっさんと、陸軍にしてみちゃ存在自体持て余してるような小娘じゃろ?ま、左遷代りにここへよこしたんじゃろうの」
「そらそうだ、そうだな。でもこの計画も相当金がかかっとるんだけん、しっかりしてもらわんと、困るで」

2人がハッチをくぐって部屋に入ると、窓から光が漏れてくる。2人が入ったのは艦内で最も高い場所。そして、その強化合成ガラスの外には、日本初の飛空艦「建御雷」の威容が見えている。

全長420m。艦橋などがある中央艦隊基部に、それを挟むように前方両舷には武装ポッド、後方両舷には大型のエンジンが二基。見た目は四本足の怪物だ。アメリカのフィッツジェラルド級にも匹敵する規模の艦である。まるでSFの世界の兵器である。それが実現される世の中になった。飛空艦なので、空を駆けるものだが、艦艇の特性上、運用は海軍の中の、特殊に訓練を受け研修を受けた者に任せられる事になった。しかし、大人の長岡でも、この巨大な艦のその威容には胸の高鳴りが抑えられない。

「しかし、最初からこの規模か。設計面での不都合が山ほどあるんじゃろうの。」
「いや、俺らも使い方が良く分かっとらんけん、中身にも問題ありじゃ」

飛空艦は今はアメリカが艦隊を持っているが、その他は中共が三隻、EU軍が四隻を持つのみである。まだまだ反重力機構も一般的な技術でなく、様々な角度から研究され尽くして造られたこの艦も、使ってみれば想定外の問題が生まれてくるだろう事は明白である。

「でもまあ、楽しみじゃけど」
「ほうじゃのう」

しかし、困難が多少予測されようと、国の最新の技術を詰め込んだ艦に乗れるのは幸せであり、光栄なことだ。それらの困難を経験できるのも、自分たちだけ。長岡は、腐りかけていた自分に活力が戻ってきているような気がしていた。

――――――――――――――――

「おぉ、こらぁデケェ!」
「子どもみてー
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