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真鉄のその艦、日の本に
第一話  接敵
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しきれてはいなかった。






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帝国海軍与勝基地は今、大きな変化の中にある。
マル3計画…最新の反重力機構によって実現した空中戦艦に航空機そして陸上機甲部隊を搭載し、陸空の兵力を一元的に運用する計画の本拠地がここ沖縄の与勝海軍基地におかれていた。

「オーライ!オーライ!」

海軍基地に、大型の自走砲が運び込まれる様、その珍しさから目を引く。
80年前の大戦以降、遠征を経験していない日本軍では、陸海軍の連携自体がかなり少なくなっていた。数少ない合同演習にも、超大国アメリカから「侵略の野心ありか」などなど、色々と批判が飛んでくる状況である。それを考えると、この計画に対しても風当たりは相当強くなりそうである。

「立派なものですね」

全長20M、全高9Mの威容。基地内のガレージに運び込まれてきた108式自走砲「頽馬」に、海軍中佐・長岡は感嘆の声を上げた。
車体基部の両側にはホバリングユニット。これは足場を選ばないだろう。車体中央には長大な30CMリニア砲。一言で言うと、「立派」であろう。

「まだまだ、使い切れてません。勉強が必要であります。」

搬送作業を見守っていた陸軍士官が長岡の方を向く。青のツナギ姿が目立つ海軍基地では、陸軍のカーキ色の制服は目立つ。

「陸軍第11師管第7戦車大隊より参りました、有田大尉であります。」
「同じく第11師管、第7戦車大隊より参りました、遠沢であります。」

有田は大柄で長髪に無精ひげがさっぱり手入れされておらず、メガネの奥で目がしょぼしょぼしている中年の男だった。
そして長岡の目を引いたのは、有田の影に隠れて見えなくなっていたくらい小柄な遠沢だった。小柄な女性、いやむしろ少女だ。整った鼻筋、切れ長の眼、髪は有田よりよほさっぱりしている。可憐で、しかし尖っている。何か尖って見える。

「帝国海軍『建御雷』副長の、長岡です。これからどうぞよろしく。」

長岡も自己紹介し、敬礼を返した。太めの眉はキリッと引き締められており、浅黒で、何とも男らしい風貌をしているのが長岡だった。

「有田大尉には、本艦搭載の機甲部隊の隊長を務めて頂きます。頽馬の他、90式戦車5輌を積み込みます。歩兵部隊は本艦付の部隊が決められないようですが、それらの指揮もあなたの担当です。」
「中隊未満、小隊以上って所ですか…」

有田はメガネの奥の眼を細めた。

「いや〜、やっと昇格さしてもらえたんですよ、この年でやっと年相応の地位につけました、いや〜長かったなあ〜」
「ははは…」

有田は話す時なかなか眼を合わさないし、どうにも力が抜ける男であった。
長岡は内心、だから出世しねえんだとつぶやきながら愛想笑いを作る。

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