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真鉄のその艦、日の本に
第一話  接敵
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た目、それなりに美人の部類である風呂元にじっと見られ、子どもは照れたのかそっぽを向く。その反応のあどけなさに風呂元は思わず笑みがこぼれる。

「今日の授業はここまでです。もう遅いので、みなさん気をつけて帰ってくださいね」






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「ご苦労だねえ。中央司令部付の中尉が夜間学校の先生なんてさあ」

帝都東京の街並みを、深緑色のジープが走る。日本三軍の元締めである中央司令部のものだ。助手席で窓側にもたれかかりながら、風呂元がふっと息を漏らす。

「教員志望だったのよ、もともと。」
「ああ、それでまだ未練があって?慈善指導員?英語でボランティーアってやつ?やってんのね」

運転席の男が茶化す。細身で、鼻立ちがすっきりしている所謂良い男だが、軍人らしい実直さはハッキリ言って、ない。
この男も中央司令部所属の情報士官で、名は中野という。歳は風呂元と同じ26で、階級も同じ中尉である。

風呂元はいつも通りの調子の中野に閉口して、窓の外、流れゆく風景に目をやった。
帝都東京の、ここは繁華街ではなく、労働者の居住区である。
ボロボロのアパートが幾つも建っているが、そこに住めるのはマシな方で、何人もの薄汚い男が路肩に横たわってくる。これから冬に向かうこの季節、凍死者はどれほど出るのだろうか。見る度日本の現状を思い知らされる光景である。今さっきまで歴史を教えていた子どもたちも、昼間はあの浮浪者に混じって働いたりするのだろうか。
今日最善を尽くせば…と言ったが、彼らがこの状況で最善を尽くしても、何かこの状況に変化はあるのだろうか。もう十分「最善」を尽くしているのではないのだろうか。

「でもま、この道楽も今日までな。」

風呂元は中野の方を目を見開いて振り向く。何を言ってるのか分からなかった。

「あれ、聞いてないの?俺とアヤちゃん、沖縄に行くんよ?マル3計画に参加だってさ。」
「ええっ?飛空艦に乗るのお!?」

声を上げた風呂元に対して、中野はウンザリした顔を作った。

「通信要員として搭乗だってさ。さしずめ、中央司令部からのお目付け役ってところかな。ちくしょう、何で俺達みたいな若造が、相応しくねえだろ普通に…」

愚痴が口を突いて出る中野。風呂元は何かいいたげな顔をしたが、結局思いとどまり、言葉を飲み下した。シートから少し浮いた体を、もう一度背もたれに預けて視線を窓の外に戻す。

仕方がない。この立場を選んだのは自分だ。そんなに子どもに教えるのが好きなら、最初から師範学校に行っておけばよかったのだ。…名残惜しいだなどと、中野に漏らした所で自分自身の情けなさが浮き立つだけである。

そう自分に言い聞かせる風呂元の表情は少し暗く、寂しさを隠
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