プロローグ
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供を攫って戦わせている時点で、真っ当に戦って勝てる算段が付いてなかったという事なのだから。
それに相手は巨大な組織……時空管理局というあんまり理解はしていないが、ある種の警察と軍隊が合体したようなものと理解しているものがバックについていたらしい。
後ろ盾も何もないこちら側が勝てる道理など最初から存在していなかった。
そして、それについては元々興味がなかった事であった。
どちらが勝とうが、負けようか自分には関係ないことであった。
ただ、自分は生き残って帰りたかっただけだった。
命を懸けて義理立てするような事情はなかったし、一緒にいたいと思えるような人間関係も築かなかったし、愛するには程遠い環境であった。
故に終わった瞬間に自分の胸に宿ったのは、絶望でも屈辱でもなく、ただ純粋な郷愁の念であった。
それを思い、久々に子供みたいに万歳をしようと思い───両手にある鉄の塊に恐怖をした。
暴発を恐れたというわけではない。今、自分が使っている銃は昔のような実弾ではなく、師匠にならった魔法を使うためのサポートする兵装。デバイスである。自分が連れられた理由のもう一つは魔道士達の心臓とも言えるリンカーンコアがあったからだったのだ。
覚えたのは戦闘に役に立つ種類の魔法で、本音を言えば実銃と変わらないのだが、それでもカートリッジを込めたりしない分、戦場での不測な事態で役に立つものであった。
それが両手に持っている事に恐怖した。
その銃自体に恐怖したのではない。
逆だ。
その銃を持っていることに全くの違和感を覚えない自分に恐怖したのだ。
絶望した。
攫われた瞬間と同じ以上に絶望した。
異世界では知らないが、地球の、それも日本のどこにこんな物を当たり前のように持てる場所があるというのだ。
自分が帰りたかったのはあの日常であり、こんなものを普通だろ? と思えるような場所ではなかったのに。
その存在の頼もしさに手を放すことができない。
殺める事にしか特化していない道具を必要だと思える自分の惰弱な精神構造に生きる場所がもうあそこではないと勝手に理解させられた。
その絶望に思わず、発狂してやろうかとやさぐれた考えを持ちながら───ただ、苦笑と溜息を吐いた。
大袈裟に驚き過ぎだろう、と独り言を発した。
何のことはない。既に無意識的に理解していたことだ。
誰が好き好んで殺人者の両手を握ってにこにこと一緒に暮らそう、遊ぼうなどと言う人間がいるのだろう。それこそ、自分がお断りだ。
だから、自分が血に汚れているからなどという下らなさ過ぎる自罰思考としてではなく、いっそ開き直ってこのまま生きるか、という達観を持ってそう決めた。
自分は巻き込まれはしたが、それを否定する勇気も努力もしなかったのだ。
殺し合いを否定しているようで、肯定していた自分が
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