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第一章〜囚われの少女〜
第一幕『聖なる騎士≪ホーリーナイト≫』
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 明日、私は殺される。
「……私の人生が舞台の一部だというのなら、なんてつまらない。なんて酷い筋書きなの?」
 だれも知らない、誰も歌わない。どんな悲劇だろうと誰も悲しまない。音楽やスポットライトというものは、ここにはない。

「私は何の罪を犯したというの? どんな罪で閉じ込められているというの? ……こんな、孤独な牢獄の中に」
真っ暗な闇の中、少女は言葉を紡ぎ続けた。

「神よ……私の存在、それは罪だというのですか? ああ……そもそも。私がこの世に生を受けたこと自体、罪だというの?」
この世に神が存在したというなら、こんな私は存在しない。初めから。
「これは罰だというのですか?」

少女は力なくその場にうなだれた。
「明日、私は……殺される」
――……らしい。

――

 目の前は絶望で真っ暗だった。ただ、夢の中にいるときだけは仄かに明るいような、明るかったような。そんな儚いあたたかさに包まれる時が、少女にとって唯一の安息だった。
 夢の中ではいつも自分が主人公でいられた。自在に夢を見ることができた。

 夢の中では、少女は自分の舞台を演じることができた。
「ああ神よ、全知全能の偉大なる神よ。あなたは私を見殺しになさるというのですか?」薄い桃色の、長い髪の少女は嘆いた。少女がその場に座り込み俯いていると、くるぶしほどまである長い髪は、何度も折り返し地を這っていた。主人公はいつも少女、ただ一人のみだった。
 しかし今日はいつもと違った。届かぬ祈りを捧げる少女の背後から、ほどなくして男の声がした。
「この世に神などは存在しない。何を嘆く必要がある?」

 少女は突然の声に驚き顔を上げた。この部屋は外からは誰も入れないはずなのだ。
「……あなたは、誰?」そのまま男の姿を見ず、恐る恐る少女は問う。

「それは、お前が一番よく知っているはずだ。俺は、お前の願望や、潜在意識の表れなのだから」返ってくる男の声。
 少女はその、普通なら理解できないような言葉を受け入れた。男の声を疑う事など考える余裕はなかった。
「あなたは私の祈りだというのね。あなたはこの生き地獄からの私の救世主?」――少女は笑っていた。その笑顔はひどく無機質だった。
「あぁ……あなたは私をお迎えになった死の神様? それとも、私をここから連れ出してくださる、聖なる騎士≪ホーリーナイト≫さま?」
 男は、少女の前に躍り出た。黒のシルクハット、黒マントの後姿が見えた。
「お前が望むというのなら、私はそのどちらにもなるだろう。なぜなら俺は、お前の願望なのだから」

「では私の救世主さま。あなたはどのようなお顔をしていらっしゃるのですか?」
好奇心からか、少女は男に興味を示す。「憐れみ? それとも慈しみ? ――私にどのような表情を向けて下さる
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