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銀色の魔法少女
第二十七話 吸血鬼
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 その時、すずかが私を離した。

 重力に従って、私はそのまま地面に倒れる。

「あ、れ、……遼、ちゃん?」

 すずかが驚いた様子でこちらを見る。

「――――――」

 私は大丈夫、と伝えたかったが、声が出ない。

 それどころか、抗いきれない眠気が私を襲う。

「遼ちゃん! 遼ちゃん!!」

 そんなすずかの叫び声を聞きながら、私は目を閉じた。



side すずか

 かっこよかった。

 私を追ってた大人たちをあっという間にやっつけた遼ちゃん。

 こちらに手を差し伸べる遼ちゃん。その首筋に赤いものが見えた。

 血だ。

 それを見た途端、私の中から熱いものが湧き上がってくる。

 ――――欲しい――――

 ほかの全てを塗りつぶすほどの、食欲。

 彼女を私の中に取り込みたいという、欲望。

「遼ちゃん……」

「ふぇ?」

 逃げて、と伝えたかった。

 けれど、目の前のそれを見ると、私が私でなくなっていく。



 ――――そして、遂に我慢の限界を迎えた――――



 気がつくと、倒れている遼ちゃん。

「あ、れ、……遼、ちゃん?」

 首筋には二つの赤い点。

 私が噛んだ跡。

「遼ちゃん! 遼ちゃん!!」

 私は遼ちゃんに駆け寄る。

 揺さぶっても、全然起きない。

「あああああああああああああああああああああああああああああ――!!」

 私は泣いた。

 泣いて、泣いて、泣き叫んだ。

 すると、遠くから誰かが駆け寄ってくる。

「すずか!」

「お姉、ちゃん」

 お姉ちゃんと、恭弥さん、それに美由希さんが駆け寄ってくる。

「遼ちゃんが、遼ちゃんが!」

「遼ちゃんがどうしたの?」

 美由希さんが遼ちゃんを診る。

「大丈夫、首以外に目立った傷はないよ」

「首……、そう、やっちゃったのね」

 首という言葉だけで、全てを察してくれたお姉ちゃん。

「取り敢えず私の家に運びましょう、美由希ちゃん、悪いけどそのままお願い」

「うん、わかった」

 美由希ちゃんが遼ちゃんを抱える。

「ほら、すずかも行くよ」

 お姉ちゃんに手を引かれて、私はこの場を後にした。



side ???

「失敗したか」

 使いにやった部下からの連絡がない。どうやら高町家に邪魔されたらしい。

「まったく、楽しようとした結果がこれか」

 私は携帯を折りたたむと、隣にいる手下に命令する。

「次は俺が行く、すぐに足を用意しろ」

「はい、只今」

 そう言ってこいつは奥に引っ込んでいく。


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