佐為と加賀が
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物語も終盤にきて、ヒカルはふと加賀の言葉を思い出す。加賀も出るって言ってたけど、まだ見てない気が。俺が見逃したのか?
―白雪姫は小人たちの作ったガラスの棺に入れられました―
壇上は森に飾られて、真ん中にプラスチックの棺が置かれている。
「おお、白雪姫。もっと注意しておけば」
小人たちは棺に顔を埋めて白雪姫の死を悲しんだ。前の席を取ったため、棺の中の佐為がぎりぎり見えるくらいで、ヒカルは見ている間とてももどかしかった。
「もしやあれは、王子様では」
左裾から登場したのは、中に人が何人か入った馬の着ぐるみに乗った加賀だった。ヒカルたちは思わず声を漏らしそうになったが、口を押さえてじっと静観する。馬から降りた王子もとい加賀は、小人たちに訳を聞く。打ちひしがれる小人たちに王子は同情の目を向けた。
「そうか、この姫は魔女に殺されて・・・」
王子は跪き、棺の中の白雪姫の頬に手を滑らせる。しばらくして顔を上げ、小人たちにお願いをした。
「お願いです。白雪姫を私に譲ってほしい。私は一目見た瞬間、この姫に恋に落ちてしまった。もし白雪姫を私にくださるのなら、私はあなたたちに何でも差し上げましょう」
その嘆願に小人たちは首を振り、こう続けた。
「白雪姫は何にも代えられないのです」
「申し訳ないですが、白雪姫を譲ることはできません」
それを聞くと王子は悲しそうに俯く。それを見てまた、小人たちも悲しそうに俯いた。
「確かにそうだ。だが私は・・・」
「白雪姫が生きていれば、喜んであなたに譲ったでしょう」
そして王子が白雪姫に目をやり、はっきりとした声でこう言った。
「では最後に、白雪姫に別れのキスをさせてくれないでしょうか」
その瞬間、ヒカルは少し動揺した。本当にやらないとはいえ、加賀と佐為の距離が近づくはずだ。そのことに何故か胸が痛んだ。
「いいでしょう、どうぞ、王子様」
小人の承諾を得て、王子は白雪姫の髪を撫で、顔を近づけていった。観客は静かにそのシーンを見守る。
「おい、男同士でこれはねーだろ」
和谷が呟くが、壇上に見入っていたヒカルが気づくことはなかった。座っている位置の問題で、よく場面が見えなかったが、次の瞬間ヒカルの心臓が跳ねた。おい。今、加賀、本当にキスした?ヒカルだけの疑問ではなく、和谷と伊角も「え」と声を漏らす。観客も少しざわざわしていた。ステージでは、佐為が勢いよく起き上がり、咳をし始める。
―すると、白雪姫が飲みこんだ毒のりんごのかけらが喉から飛び出したのです―
小人たちは歓声をあげて白雪姫に抱きつく。白雪姫は何事だろうといった風に小人たちを眺め、目の前に膝をついた王子に気が付いた。
「私はどこにいるのかしら」
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