―理由―
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1対1でデュエルを始めかねないヨハンを、追い出すように俺の部屋から出してから、俺は【機械戦士】デッキを机の上に置いていた。俺と明日香は目の前のソファーに座り、ヨハンが来る前の態勢へと戻る。
「遊矢。あなたをカードケースをどこへ?」
「ああ、デッキの調整の前に……やっておきたいことがあるんだ」
今はデッキの調整より前に、やらなくてはならないことが出来た。ヨハンの【宝玉獣】デッキと戦って、俺が考えたことを自己完結する。
そのためには。
「なんで俺は、機械戦士を使ってるのか。それを思い出したいんだ」
思い出すとは言っても記憶喪失という訳ではなく、ただ新たなデッキを作る前に思い返しておきあたいだけだ。誰にだってあるだろう、今使っているデッキを組んだ理由が。
誰か大切な人に貰ったでも、ただパックで当たっただけでも、イラストが気に入ったでも……カードの精霊に選ばれたでも。デュエリストとそのデッキの数だけ、そこには必ずしも一つの物語があるものだ。
「明日香には……聞いていて欲しい」
「分かったわ。そうね、紅茶でも飲みながら」
そう言ってソファーから立ち上がり、二人分の紅茶を用意しようとする明日香に感謝しつつ、一声かけずにはいられなかった。
「……俺は緑茶で」
確実にどうでも良いことではあるが、俺は紅茶より緑茶派だった。……そして驚きだったのが、俺が言う前に明日香が緑茶を用意していたことだ。
二種類のお茶と、話し手となる俺に聞き手の明日香の準備が完了し、俺は【機械戦士】と関わった記憶をたどり始める。
「中学生ぐらいの頃まで、俺はデュエルモンスターズに触れてなかった」
正確には触れてなかった訳ではないが、デュエリストでは無かったというべきか。友人たちに貸してもらったデッキで、ルールも知らずに幾度か遊んでいた程度だ。
実家の機械工場を手伝っていた俺だったが、そこである噂を聞いた。……こんな片田舎に引っ越して来た、物好きなお金持ちがアンティデュエルを行っていると。
俺が住んでいた田舎は大したカードもなく、そのお金持ちの息子から見れば現地のデュエリストは、まさしくカモだったことだろう。友人たちはみんなそのお金持ちに敗れて、自分のデッキを失っていった。
偶然その現場を見つけて止めに入ったんだが、デッキを持ってないと相手にされず、そのアンティデュエルの現場を止めることは出来なかった。だったら俺も、そのデッキとやらを用意してやる……って、子供らしい正義感が働いた。
だけどカードショップもまともにない田舎で、ただの子供が簡単にデッキを手に入れることは出来ない。どうしようかと思いながら、実家の手伝いをしていた時。
……家の近くにあったジャンク品の
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