第三十六話 浴衣を着てその三
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「このこと確か入学の時にも話したと思うけれど」
「そうだったかしら」
「浴衣だけでなく振袖も持ってるわよ」
こちらもだというのだ。
「服は結構あるのよ、お金はないけれど」
「いや、お金の話はなしでね」
彩夏は景子の今の言葉には苦笑いで返した。
「それ言うとちょっと洒落にならないから」
「そう、じゃあ」
「とにかく景子ちゃんは着物は一杯持ってるのね」
「そうなのよ」
景子はあらためて話した。
「神社っていう日本の場所のせいかね」
「浴衣も持ってるのね」
「その中で赤い浴衣着ようって思ってるの」
「赤?」
「そう、赤ね」
その色の浴衣をだというのだ。
「着ようって思ってるの」
「赤ねえ」
「あまりないでしょ、そうした色の浴衣って」
それがあったというのだ、彼女は。
そのことを話してだ、そしてだった。
彩夏もだ、こう言ったのだった。
「私も家に浴衣あるし」
「どんな浴衣なの?」
「二つあって、一つは桃色でね」
「もう一つはどんなのなの?」
「赤なの、けれど赤だとね」
景子を見ての言葉だ。
「景子ちゃんと被るからね」
「桃色にするのね」
「ええ、そっちにするわ」
今決めたのだった、彩夏もかき氷を食べているが彼女もまた苺のシロップをかけている。見れば五人共苺である。
「桃色にね」
「何か悪いわね、気を使わせて」
「いいのよ、私元々ピンクが好きだし」
彩夏は微笑んで景子に返した。
「だからね」
「そうなの」
「うん、じゃあ夏祭りの時も宜しくね」
「ええ、じゃあね」
この話はこれで終わった、そしてだった。
美優も言った、彼女の言う色は。
「あたしは緑の浴衣にしようか、家にそれしかないしさ」
「美優ちゃんはそれなのね」
「ああ、それにな」
しようとだ、景子にも答える。
「そうするよ」
「私も家の浴衣今青いのしかないから」
最後は里香だった、彼女も言うのだった。
「青にするわ」
「私は白だし」
琴乃も言う。
「五人共色違いになるわね」
「いいんじゃない、それで」
「ねえ、いつも私達そんな感じだし」
「それぞれ色違いでね」
景子と彩夏がこう事のに言う。
「個性が出ててね」
「いいと思うわ」
「そうよね、じゃあね」
琴乃はにこりとして言った。
「私は白でいくから」
「白い浴衣は注意してね」
景子がここでこう琴乃に言って来た。
「白だとどうしてもね」
「あれに見えるっていうのね」
「そう、幽霊の服にね」
景子はここで冗談めかして両手を垂れさせて前に出させた。それは円山応挙等の絵にもある幽霊の手のそれである。
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