第三章
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「それは」
「いえ、それを何とかするのがです」
「恋愛ですか」
「そうです、これはと思った方に声をかけられてはどうでしょうか」
「その相手さえも見付からないのですよ」
伯爵夫人に難しい顔でまた答える。
「これが中々」
「そうですか、では私から言うことは何もないですね」
伯爵夫人はアイルマンがつれない様子なのを見てそれでこう述べた。
「後は大尉次第ですね」
「私次第ですか」
「そうです、お相手を見付けることもそれからを楽しむのも」
その全てはというのだ。
「貴方次第になりますね」
「そうなのですか」
「私の知り合いの方を紹介させて頂こうと思っていましたが」
伯爵夫人はそう考えていた、しかしだったのだ。
アイルマンのつれない態度を見て、その考えを収めたのである。
しかしアイルマンを嫌いではないのかまだこう言ったのだった。
「よい出会いがあることを」
「有り難うございます」
アイルマンは伯爵夫人のその言葉を受けた、そのうえで。
その宴の場を空虚に漂った、着飾った貴婦人達も美少女達も今は目に入らない、ただその場にある美食と美酒を時折楽しむだけだった。
同僚達と話もする、ミハエルは既に婚約者とダンスに興じたりしている。彼だけが空虚に漂っていたのだった。
宴は下らなくはなかった、口にするものも耳に聴くものもいい、だが。
彼は楽しまずつまらないとも思わずただ空虚だった。その空虚の中で漂っていると。
その彼に声をかける者がいた、それは。
一人の美女だった、黒檀の様な黒髪に鳶色の優しい瞳を持つ優雅な顔立ちである。肌は白く鼻は高い。白いドレスからもその豊かな肢体がわかる。
美女はまずその小さな唇でこう彼に声をかけてきたのだ。
「あの」
「はい、何でしょうか」
「実は」
ここで美女は扇を取り出して来た、淡いピンクの扇だ。扇の先の羽毛は扇自体よりも濃い色のピンクである。
その扇を閉じたまま頬にやって微笑んでこう言ったのである。
「こういうことなのですが」
「確かその言葉の意味は」
「御存知ですね」
「はい、幾分か知っていますので」
扇言葉というものをだというのだ。
「確かそれは気に入ったということですね」
「はい、貴方を」
「私をですか」
「その通りです、私は貴方を気に入りました」
美女は微笑んだままアイルマンに答える。
「そういうことなのです」
「何故私を気に入ったのでしょうか」
「お話は聞いています」
彼のその顔を見て言う。背はアイルマンの方が遥かに高いので見上げる形になっている。
「ゲルマン=アイルマン大尉ですね」
「私の名前も」
「ですからお話は聞いています。立派な方だと」
「あくまで噂ですね、それは」
立派と言われてだ、アイルマン
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