第一章
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西郷どんと豆腐
西郷隆盛はこの時都で大久保達と共に酒を楽しんでいた。その肴は豆腐だった。
その豆腐も味わいながらだった、大久保は西郷に対して笑みを浮かべてこんなことを言った。
「小吉どん、豆腐は今も好きもっそか」
「大好きでごわす」
西郷は大久保に対して笑顔で応える、応えながらその豆腐を食べる。
豆腐は鍋の中にある、その湯豆腐を食べつつのやり取りだった。
「いや、思えばでごわす」
「あの時でごわすな」
「そう、おいどんはずっと豆腐なんてあるとは知らなかったでごわす」
「おいもじゃ」
それは大久保もだというのだ。
「おいも同じでごわすよ」
「おお、一蔵どんもでごわすか」
「それはお互い様でごわすよ」
「?豆腐を知らなかったでごわすか」
周りで一緒に飲んでいる薩摩藩の藩士達が二人の言葉に怪訝な顔になった。
「西郷どんも大久保どんも」
「そうでごわすか」
「そうでごわす、おいどんの家は貧乏だったでごわすからな」
「おいもな」
二人は笑みで彼等に応えた。
「豆腐なんてものは知らなかったでごわすよ」
「こんなご馳走は」
「ああ、お二人はそうでごわしたな」
「かつては」
ここで藩士達も気付いた、西郷も大久保も武士であるが貧しい家の出だったのだ。しかしそれでもなのだ。
「豆腐は普通に売ってるでごわすか」
「そうたい、豆腐を見たことがなかったでごわすか」
「西郷どんも大久保どんも」
「そうでごわしたか」
「その時の話をするでごわすか」
西郷は杯の酒を飲みつつ笑顔で話をしだした。
「おいどんの子供の頃の話でごわすが」
「おお、西郷どんのお話でごわすか」
「是非聞かせてくれもっそ」
藩士達は西郷の話の面白さを知っている、それで身を乗り出して願った。
「では今から酒とその豆腐を楽しみながら」
「聞かせてくれもっそ」
「話してもよいでごわすか」
西郷の方も彼等に断りを入れる。
「下らない話でありもっそが」
「西郷どんの話だから面白いのでごわす」
「だから是非に」
「おいからもお願いもっす」
大久保も微笑んで頼む、厳しい顔でいることが多い彼であるがそれでも西郷の前ではこうした笑みも出すのだ。親しい仲間や家族の前では。
その大久保、幼い頃から共にいる無二の友の言葉も受けてだった。
西郷も微笑み応えた。
「では今からはじめもっそ」
「さあ酒を飲んで」
「豆腐も食べながらでごわす」
皆でその酒や豆腐を楽しみながら西郷の話を聞く、西郷もその二つを楽しみながらそのうえでゆっくりと口を開きはじめた。
西郷の家は身分も低くしかも子沢山だった、それが為に。
非常に貧しく飯のおかずはいつもこれだった。
「いや
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