第二章
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それでだった、私は乗馬で汗を流し身体を清め昼食を摂ってから屋敷を後にした。本来は別邸だが今は私の屋敷となっているこの場所から。
街で宝石店でサファイアとルビーを買ってから画廊に入った、私が経営しているうちの一つだ。
画廊には彼の絵がある、全て彼が描いた絵だ。風景画もあるが人物画、宗教画もある。どれもが独特の趣がある。
芸術、まさにそれがあった。私はその芸術達を観ながら画廊の中を進んだ。
そして彼の前に来た、私よりずっと背は高いがほっそりとした優男だ。
その彼に対して、私はこう言った。
「今夜だけれど」
「あの、昨夜は」
「いいわ」
微笑んでこう告げた、そこはあえて聞かなかった。
「今夜大丈夫かしら」
「はい」
私に戸惑いながらも答えてきた。
「空いています」
「では画廊が閉じたらね」
「それからですね」
「まずは夕食にしましょう」
レストラン、そこで二人で。
「それから歌劇場に行きましょう」
「わかりました」
「馬車も用意してあるから」
そこから私の屋敷に行ってだった。
「二人で過ごしましょう」
「奥様、そうさせて頂きます」
「今日の夜は長ければいいわね」
私は彼のその顔、特に目を見ながら言った。
「そう思うわ」
「私もそう思います」
「同じね、それでだけれど」
私は彼の言葉に空虚な響きがあるのを感じながら彼に別のことを問うた、その問うたことは何かというと。
「今何を描いているのかしら」
「花です」
彼は私にすぐに答えてくれた。
「花を描いています」
「花、なのね」
「それを描いています」
私は花が好きだ、それで彼にこうも尋ねた。
「ではどの花かしら」
「実は花にはあまり詳しくないので」
彼は画家だが花の種類には無頓着なところがある、それでこう言ったのだ。
「どの種類かは」
「わからないので」
「観て頂けるでしょうか、奥様に」
「ええ、いいわ」
私はすぐに彼に微笑んで答えた。
「それならね」
「こちらです」
彼は私を画廊の裏に案内してくれた、そこには一枚のキャンバスがあった。
描きかけの油絵だ、花瓶に挿した花だった。
その花を観て私はわかった、そしてこう呟いた。
「そういうことなのね」
「?何か」
「いえ、何でもないわ」
ここから先は言わなかった、あえて。
それでもここは言わなけrばならない場だ、私は彼に今はこの言葉を送った。
「この花はね」
「何という花でしょうか。道で見て素晴らしいと思ったのですが」
「シュウメイギクよ」
私はそのピンク色の太陽の様に広がっている花弁の花を見て答えた。
「そういう名前よ」
「シュウメイギクというのですか」
「そうよ」
その花だと、私は彼に答えた。
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