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出会えた奇跡
第一章

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                  出会えた奇跡
 ゲンナジー=コルチェンコはサンクトペテルブルグに住んでいるごく普通のロシアの青年だ、趣味はサッカー観戦と酒だ。
 今日も仕事帰りに居酒屋でウォッカと少量の干し魚をあてに同僚達と飲んでいた、その時にこう言ったのである。
「俺もそろそろ結婚したいな」
「それ俺もだからな」
「俺もだよ」
 同僚達はそのコルチェンコにすぐにこう返した。
「早いところ相手いないってな」
「そう思ってるよ」
「だろ?それでなんだよ」
 コルチェンコはここぞとばかりにまた言った。
「そろそって思うけれれどな」
「けれど御前今彼女いないだろ」
 同僚の一人がウォッカを飲みながら彼に問うた。
「そうだろ」
「ああ、そうだよ」
 コルチェンコはその事実を嫌そうな顔で認めた。
「今はな」
「別れて一年か?」
「それ位になるな」
 実際にそれ位だというのだ。
「もうな」
「そうか、長いな」
「で、そろそろな」
 コルチェンコはウォッカを飲みつつ言う。
「もう一回相手見つけてな」
「それでか」
「結婚したいって思ってるんだよ」
「じゃあまずは相手を見つけないとな」
 結婚は一人では出来ない、これはどの国でもだ。
「それからだな」
「相手いないかね、誰か」
「御前好みあれだろ。細い娘だよ」
「ああ、何時までもな」
 同僚達に問われるままこの好みも話した。
「そういう娘がいいけれどな」
「ロシアで何時までも痩せてるってな」
「それはな」 
 同僚達はコルチェンコの言葉に顔を見合わせてそのうえで話した。
「難しいよな」
「あまりいないよな」
「ロシアだからな」
「ちょっとな」
「何でだよ、ロシア女ってのは年取ると皆太るんだよ」
 コルチェンコはウォッカで赤くなった顔をむっとさせてこうも言った。
「何でなんだよ」
「そんなの寒いからに決まってるだろ」
「他に理由あるか?」
 同僚達は文句を言うコルチェンコに即座に返した。ロシアでは女の人は太っているのが普通になる理由は世界的に有名だ。
「この街だって寒いからな」
「太らないとやっていけないんだよ」
「俺達がいつも飲んでるのと一緒だよ」
「それで何時までも痩せてるってな」
「ないか、やっぱり」
 コルチェンコは同僚達の話を聞いて難しい顔になった。
「というかいないか」
「二十代前半位まではいるさ」
「けれどそれ以降はな」
 二十五、その曲がり角からはというのだ。
「もう太らないと生きていけないだろ」
「ここはロシアだぞ」
「いや、それでもだよ」
 コルチェンコは同僚達に言われてもまだ言う。
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