第一物語・後半-日来独立編-
第四十四章 秘めし決意《4》
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『あったりめえだろうがよお』
と、継叉の前に現れたのは増田だ。
ついでと言わんばかりに、自身の首に増田の手が回されたジューセンも映った。
『緋翼は恋和の嬢ちゃんが朱鳥天から持ってきた設計図で、機械部総出で造ったもんだ。そして産まれたのが火炎ノ緋翼だ』
この騎神は、そんじゃそこらの騎神とは違う。
何故なら、
『オレ達の意思を込めて造ったもんだ、日来のな。そりゃあ、ただの機械にだって影響は出らあ』
何時かは日来もこんなのが造れたらと、作業中によく語ったものだ。
夢を語るのは楽しかった。
それは、火炎ノ緋翼が一番よく解っているだろう。
自身が形造られるなかで、間近でそれを、ただ深々と黙りながら聞いていたのだから。
『完成したそいつは、そりゃあそりゃあ好みがあって、むさっ苦しい俺達を嫌ったもんだ。そして操縦者として選んだのがお前だ、入直』
何時もはお前呼ばわりなのに、久し振りに名前を呼ばれた気がする。
不馴れであったために入直は照れからか頬を微かに上げ、増田の声を聞いた。
『なんでお前を選んだかは本人しか分からねえが、お前は選ばれたんだ。だったらお返しとして、きちっとそいつの面倒を見るのが筋ってもんだろ』
「かっ、言ってくれるよ」
『……入直は、緋翼をどう想っている……』
「なんだいいきなり。ふ、そんなの決まってるじゃないか」
火炎ノ緋翼の、人でいう頬の部分に触れる。
そんなのは決まっている。
それは、
「緋翼は、アタイの“唯一”の家族さ」
たった二年間足らずの月日しか共にしていないが、それでも緋翼は家族だ。
何時も側にいてくれた。
口も開かず、ただ横に。
だからだろうか、相手が機械なのに情が湧いてくる。
もし話せたらと思ったこともあるし、これからも共にいたいと思ったこともある。
緋翼、アンタもそうだろ?
同じ気持ちであってほしいと、願い思う。
もう一度、声を聞きたくて。
『カゾク、イリナオ、ハ……カゾク。
ダカラ――マモル』
言葉の後に、火炎ノ緋翼を中心に空の一部が赤く染まった。
否、火炎ノ緋翼から突如として放出された赤の流魔によって空が赤くなったのだ。
赤の流魔は十字に広がり、一つの大きな鳥に似た姿を形成した。
そして鳶が一鳴き、その声を響かせた。
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