第一物語・後半-日来独立編-
第四十四章 秘めし決意《4》
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きっと、自分らの長は、後悔を残さないために宇天の長に会いに行くのだろう。
たった二回目で、最後の告白となる今日で。
例えフラれても、やり遂げたことで悔いを残さないように。
自分は、本当にこれでいいのだろうか。
もしかしたら、もしかしたらもっとやれるのかもしれない。
ならば、やってみたい。
そう思う。
この緋翼と共に、高く、この空を行きたい。
『マ……マ、マモ、ル』
「今、なんて……?」
何かを言った。
空耳だろうか。いや、聞き間違いなどではない。
確かに聞こえた。すぐ横で。
落ちるなかで入直は動き、火炎ノ緋翼の顔を正面から見詰める。
燃料は切れた筈だが、動いている。
鼓動に似たものが伝わってくるから分かる。
「緋翼! 聞こえてるんだろ!」
叫ぶ。
顔の前で、うるさいぐらいに。
『一体何をやってるんだ』
落ちていくのを、空から見下ろす戦竜は言う。
騎神に自我など無い。
同一式の騎神で操縦者が騎神の一部となってしまった場合や、人工的知能を与えられたものは別だが。
前者は当てはまらないが、後者の人工的知能を持っていたとしても機械的な判断しか出来無い。
返事を返すぐらいのことは出来るが、それをやってどうしようというのか。
戦竜は、黙ってそれを見ていた。
彼女もまた、自分と同じ騎神の操縦者の一人なのだから。
●
「まさか、自我が形成しつつあるのか」
呟く入直の顔の横に、一つの映画面|《モニター》が表示された。
映るのは継叉だ。
彼の周りにも映画面が表示されており、その全てが騎神関連のものだ。
真っ直ぐ、こちらに視線を向けたまま継叉は口を開く。
『“マモル”か。緋翼の様子はどうだい、入直』
「燃料が切れてる筈なのに緋翼が動いているんさ。予備燃料かなんか積んだのかい」
『まさか、重量をそれ以上増すようなことはしないよ。合理的じゃないからね』
ならば何故だ。
何故、火炎ノ緋翼は動いている。
訳が分からない。
落ちていくなかで入直の頭のなかは、糸が絡まったように思考が乱れていた。
何をどうしたらいいか、分からないからだ。
『緋翼には異常は見られない。とすると――』
顎に手を着く継叉がその後の言葉を言おうとしたが、
「流魔の作用かい」
入直が言った。
理解出来ていたのだろう。継叉と考えが一致したことで、納得し、断言したようにも聞こえた。
『そうだろうね。流魔は全てを形成する祖源体だ。もし緋翼に自我が芽生え始めていたとしたならば、意思を伝える伝子が働いたんだと思うよ』
「なら、さっき何か言っていたのは緋翼自身の言葉なのかい」
『断言は出来無いけど、多分ね。きっと緋翼は他の騎神とは違う何かを持ってる』
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