第一物語・後半-日来独立編-
第四十四章 秘めし決意《4》
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守るためにしか使わないが、ことがことなので別だ。
後で流魔を貯める必要があるのは、まあ、面倒さ。
思いながら、迫る流魔刀に意識を集中させる。
まさかの行動に辰ノ大花の騎神の動きに乱れが生じているが、これならばカウンターを狙えるだろう。
「行くよ、緋翼!」
こちらの考えは伝わっている。
だから攻撃の準備をしているようにと、そう叫んだ。
勝機を掴めば勝ちとなる。
自身を危険に晒す価値はある。
流魔刀が迫る。
今ならば見える。
迫る流魔刀の動きが、しっかりと。
いける。
そう感じた。
両の手を前に出し、防御壁展開の構えを取る。
来い!
大気がうっすらと青みがかり、それが防御壁の形を形成するまで数秒も掛からなかった。
もう軌道は変えられないと悟ったのか、戦竜は握る流魔刀をそのまま降り下ろした。
しかし、刃を縮めて。
操縦者を負傷させる気は無い。
騎神の動きが止まれば、それでいいからだ。
そしてぶつかり合う。
金と金がぶつかったような音で、冷たい音が響いた。
だが、ぶつかったのは防御壁と流魔刀ではない。
それは、
「なんでなんさ……」
『まさか、こんなことが』
火炎ノ緋翼の負傷した左腕と、戦竜が降り下ろした流魔刀だ。
展開した防御壁は火炎ノ緋翼が腕を動かす際に割られ、そのまま腕と流魔刀がぶつかった。
入直の瞳に映るのは、吹き飛ばされた火炎ノ緋翼の腕だ。
前腕が切られ、宙に青い燃料を撒き散らす。
戦闘相手の騎神もそうだが、操縦者である入直も同じく驚いていた。
何故なら、こんなことはこれまでに一度もなかったからだ。
確かに操縦者としては認識していたが、こちらを守る動作は何一つしなかった。
自身の身を守る時のみにしかそのような動作は行わなかったのに、何故今それを行ったのか。
火炎ノ緋翼にとって先程の光景は、身に危険が迫っていると捉えても不思議では無い。が、こちらはそれを防ぐと考え、それは伝わった筈だ。
なのに何故。
それでは防げないと、機械的判断を下したからか。
頼りないと、そう思ったからか。
右肩に乗っている入直は、動揺の表情を火炎ノ緋翼に向ける。
しかし、答えは返ってこなかった。
返ってくる筈もない。
相手は騎神だ。
感情の無い、機械の命。
「どうやら、ここでお仕舞いみたいだねえ」
落ちていく。
燃料切れだ。
戦闘用騎神相手に、良く頑張った方だろう。
増田との賭け事には負けたが、後で挽回すればいい。
火炎ノ緋翼の、光を無くした瞳。
重力に引っ張られ、地に落ちていく。
負けるのは悔しい。
もっとやれると思っていた。
だから思っていた以上に出来無くて、悔しい。
後悔。
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