第四章
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「この町のお金持ちは他の町とは違いますから」
「独特なのですね」
「伊達に歴史がある訳ではないですからね、この町はそうしたことでも特別ですよ」
「イギリスの貴族とはまた違いますね」
「そう思います、日本の中でも特異です」
そこまで違うというのだ。
「この町のお金持ちは」
「ああした服を着る程ですか」
「そうです、それでもあそこまで見事な着物は僕もはじめて見ました」
赤城は今も女の着物を脳裏に残している、そのうえで語り続ける。
「凄かったですよ」
「そうですか」
この時は女の着物の話に夢中になりストーンリバーに何を話そうとしていたのかを忘れてしまった、この時の修学旅行は楽しく過ごした。
赤城とストーンリバーは次の年も修学旅行を引率した、この時も産寧坂を歩いた。
そしてここでもだった、二人は女に会った。
女はあの時の着物姿で二人の前にいた、そしてだった。
ストーンリバーの顔を一瞥して何も言わず姿を消した、この時も何処かに消えた。
ストーンリバーは女を見てから赤城に言った。
「今年も会いましたね」
「はい」
赤城は怪訝な顔で答えた、顔は女がいた方を見たままだ。
「そうですね」
「去年と同じ服ですね」
「間違いなくですね」
「不思議です、去年も会って」
ストーンリバーは実際に不思議なものを見た顔で赤城に語る。
「今年もとは」
「まさか」
赤城はストーンリバーに応えなかった、女がいた方を見たままだ。
そしてだ、深刻な何か不吉なものを感じている顔でやや俯いて呟いたのだった。
「この坂の言い伝え通りに」
「何かありますか?」
「あっ、いえ」
青ざめた顔でストーンリバーに応えた。
「何も」
「顔色が悪いですが」
「まさか」
「まさか?」
「来年若しここで会えば」
蒼白な顔のままストーンリバーに言っていく。
「先生は」
「私がですか」
「本当にまさかと思います」
そのことを心から否定しない、どうしてもそうしたいという顔だった。
「ですが来年会えばその時は」
「赤城先生、本当にどうされたんですか?」
「来年そうであればお話します」
赤城は青から白に、血の気がさらに引いた顔でストーンリバーに話していく。
「その時に」
「来年ですか」
「はい、来年です」
「何かよくわかりませんがわかりました」
ストーンリバーも怪訝な顔になった、だがその怪訝は赤城のそれとは全く違う怪訝であった。
「では来年に」
「その時に」
この時は思い出した、そして去年話すことを忘れていたことも思い出してこのことを後悔しもした、後悔してもはじまらないことも理解しつつ。
その次の年も二人は学生達を引率して坂に来た、すると。
また女と会った、ここで遂にだった。
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