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今時のバンパイア
第五章

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「こうした水着も着られるのよ」
「そうか」
「で、まずは準備体操をしてね」
 それからだというのだ。
「海に入りましょう」
「ああ、泳ぐんだな」
「海に来たら泳がないとね」
 それでだというのだ。
「行こうね」
「わかったよ。じゃあな」
「お昼は焼きそばにビールよ」
 日本の海の定番の組み合わせだった。
「ソーセージも入れたね」
「それか」
「そう、行くわよ」
 こうした話をしてだった、禎丞は海でも桃香と共に楽しんだ。
 そして昼に海の家でソーセージを入れたソースと胡椒をきかした焼きそばとビールを楽しんだ後だった。 
 禎丞は少しトイレに行って戻ったが一人だった桃香にナンパ男達が声をかけていた。禎丞は丁度その場面を少し離れたところから見た。
 男達は軽い笑顔で彼女に言っていた。
「彼女、一人だったらさ」
「今から西瓜割りしない?」
「それか何か食べない?」
「奢るよ」
「あっ、別にいいから」
 だが桃香はにこりと笑ってこう返してだった。
 一言こう言ったのだった。
「帰ってね」
 この言葉と共に彼等を見るとそれでだった。
 ナンパ男達か急に大人しくなってそれでだった。
 態度を変えてこう彼女に答えた。
「ああ、そう言うんならさ」
「いいよ」
「帰れっていうんならさ」
「もうね」
 やけにあっさりとした、何処かぽかんとした口調で言ってだった。彼等は桃香の前からそそくさと立ち去った。その一部始終を見てから。
 桃香のところに来てこう声をかけた。
「あっさり帰ったな」
「あっ、見てたの」
「やばそうだったら出て来るつもりだったけれどさ」
 実際に彼はこう考えていた、心は身構えていたのだ。
「それに及ばなかったな」
「大丈夫だから、あれ位」
「あれ位かよ」
「そう、人間の男なら何人来てもね」
 余裕の微笑での言葉だ。
「大丈夫よ」
「いや、誰もがあああっさり引き下がってくれないだろ」
「大丈夫よ、私ならね」
「あんたならかよ」
「そう、どんな奴が来てもね」
 例えどれだけの数が来てもというのだ。
「大丈夫なのよ」
「そうなのか」
「今そんな小さな身体でって思ったわね」
 禎丞の目を見て微笑んで言った言葉だ。
「そうよね」
「いや、それは」
「こうしたことは身体の大きさじゃないのよ」
 禎丞の心の中の言葉を見透かした様に言っていく。
「コツなのよ」
「今みたいにかよ」
「そう、じゃあね」
 ここまで言ってそのうえでだった。
 桃香は微笑みでこうも言ったのだ。
「お酒入ってる泳ぐと危ないから」
「ああ、下手したら死ぬからな」
「別のことする?西瓜割りでも」
「西瓜か」
「赤い西瓜でね」
 黄色のクリーム西瓜ではなく、というのだ。
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