第二章
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「それでなのよ」
「赤ねえ」
「そう、赤がね」
「どうしてそんなに赤が好きなんだよ」
「元々よ、赤はいいわね」
答えになっていない感じだがこう禎丞に言う、そしてだった。
彼をその店に連れて行く、店に入ると暗くゴスペルがかかっているムードのある店だった、その店ののカウンターに二人並んで座ると。
少女は早速そのブラッディマリーを注文した、数は二つだった。
「はい、あんたの分もね」
「ああ、悪いな」
「お礼はいいのよ。それよりね」
「飲むか」
「ええ、あと苺とトマトを使ったお料理もね」
その二つも注文するというのだ。
「鰯のトマト煮もいいかしら、大蒜を効かして」
「何かラテンっぽいな」
「イタリアかスペインね」
「ああ、そんな感じだよな」
「好きよ、どっちも」
イタリアもスペインもだというのだ。
「スパゲティもパエリアもね」
「そのどっちもなんだ」
「そう、どちらの国のお料理もね」
「トマトが好きなんだ」
「唐辛子もね、あと白だけれど大蒜も」
これも好きだというのだ。
「好きよ、ワインもね」
「そうか、じゃあな」
「飲むわね。それで食べるわね」
「それじゃあな」
二人でそのブラッディマリーのグラスで乾杯してから飲む、赤いカクテルを飲んでそのうえで言えた言葉は。
「あっ、本当にな」
「美味しいでしょ」
「うん、美味しいよ」
こう少女に言う。
「トマトもお酒もな」
「いいでしょ、それでだけれど」
「他のカクテルも飲んでか」
「ワインもね」
それも飲むというのだ。
「後はその鰯と他にも」
「苺とかトマト使った料理か」
「楽しみましょう」
少女から言ってだった、そうして。
二人でその赤い酒に料理を楽しんだ、料理はイタリアやスペインのもので唐辛子も大蒜もよく使っていた、そうしたものを楽しんでから。
店を出るとその前で少女が言ってきた。
「あんたの名前は聞いたけれど」
「ああ、あんたの名前聞いてなかったな」
禎丞も言われてこのことに気付いた。
「そうだったよな」
「私の名前は安倍桃香っていうの」
「桃香ちゃんっていうんだ」
「そう呼んでくれていいわ、それであんたの大学はあそこね」
「そう、市立のさ」
禎丞は既に通っている大学のことも教えていた。
「法学部だよ」
「わかったわ、それもね」
「また会えたらいいわね」
「絶対に会えるわ、それじゃあね」
その少女安倍桃香はにこりと笑って今は禎丞と別れた、この時はこれで終わった。
だが三日後、昼にキャンバスを歩いていた彼の前に。
その桃香がいた、あの夜に出会ったままの格好で。
その格好でいて明るい笑顔でこう言って来たのだ。
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