アインクラッド 後編
In the dream, for the dream
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鳴り散らす。
「手前ェ、自分が何言ってンのか分かってんのか! この二人を捨て駒扱いする気かよ!!」
「止せ、クライン。……いいだろう、その条件、呑んでやる」
マサキがクラインの肩に手をかけて言うと、刀使いの顔が驚愕に染まった。
「なっ……!? オイ止めろ、今すぐ取り消せ!!」
「……俺も、それでいい」
「!? キリト、お前ェ……ッ!!」
「どうやら、討伐隊二人の承諾は取れたようだな。……君たちはどうする?」
満足げに頷くと、ヒースクリフは脇の聖竜連合へ目線を振った。彼らはしばし無言を貫いていたが、この人数を相手取ることは不可能だと考えたのだろう、やがてリーダーらしき男が「分かった」とだけ短く言った。
「いいだろう。……さて、残るは君たちだけだが……どうする?」
このマップに集った50名ほどの視線が、クライン一人に注がれた。奥歯を噛み締めるギリギリという音が冬の凍てつく空気を伝わって鼓膜を振動させる。刀使いはしばし葛藤を続けていたが、やがて刀を鈍い音と共に地面に突き立てると、ドカッという効果音を上げてその場に座り込んだ。
「ああもう知らねェ! 手前ェらのことなんか知ったことか! ボスでも何でも勝手に倒しに行って、勝手に死にやがれコンチクショウが!!」
一際大きく怒鳴ったかと思うと、クラインは一転して俯き、黙り込んだ。怒りを制御し切れていないのだろう、サムライの計鎧に似た防具の下に覗く腕が震えている。
「これで全員の承諾が得られたな。……では、今回のことは彼女に証人となってもらうものとする」
ヒースクリフは一度全体を見渡すと、脇へと退いた。すると、その影から血盟騎士団のユニフォームではなく純白の装備を着込んだ少女が姿を現す。
彼女、エミは怯えたような表情で一歩前に出ると、ぎこちない動作で頭を下げた。
「では、二人とも。よろしく頼む」
相変わらず無機質なその声に二人ははっと我に帰ると、目的地へと続くワープポイントへと飛び込んだ。転移時のエフェクトによって漂白されていく感覚の中で、「死ぬなよ」という短い声が聞こえた気がした。
ワープポイントを抜けると、中心にそびえる一本の巨樹の周りを雪に覆われた平原が包んだ、白銀の世界が姿を現した。周囲を白く覆われた中で堂々とそびえるモミの姿は、ある種の孤高さすら醸し出している。
しかし、マサキはその光景を美しいとは感じなかった。この世界に綺麗なものなど何一つ存在しない。あるのは、真っ黒に汚れているか、真っ白に穢れているか。その違いだけなのだから。
マサキは蒼風を握りなおすと、何かを言いかけた怪物に向かって全力で雪を蹴った。
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