アインクラッド 後編
In the dream, for the dream
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《風林火山》の面々も自分の得物を抜く。現れた銀色の金属の塊が、雪の光を反射してギラリと鈍い輝きを放つ。
――誰もが双方入り乱れての乱戦を覚悟した、その瞬間。またもワープポイントから欄入者が現れた。
ここに来て現れた第五の勢力は、風林火山と同じ十ほどの規模だった。そして、先頭の一人ともう一人を除く全員が白地に赤の十字をあしらったユニフォームを着用している。
「それは困るな。我が《血盟騎士団》としても、フラグボスがもたらす莫大な利益が目の前で攫われていくのを、指を咥えて見ているわけにはいかない」
一人だけ赤と白の配色が他と逆転した鎧を着込んだ人物――この世界で最強と謳われる《聖騎士》ヒースクリフは、鋼のように無機質な声を響かせた。全員の視線が彼に集まり、張り詰めていた緊張の糸が一瞬緩みかける。
フロアボス攻略の時以外は滅多に人前に姿を現すことがないこの男が、一体何故――。そんな疑問を抱く隙すら与えずに、ヒースクリフは一歩前に出ると、感情の起伏が一切感じられない声色で話し始める。
「さて、今も言った通り、フラグボスが誰かに討伐され、莫大な報酬の全てを持っていかれるのをみすみす見逃すなど、我々にはできない。……が、今ここで諸君らとことを構える気も、こちらにはない。どうだろう? ここは公平に交渉するというのは?」
「交渉だとォ?」
突如交渉による解決を提案したヒースクリフに、クラインが噛み付いた。聖竜連合のプレイヤーたちも、言葉は発さないが苦い視線を向けている。しかし、その状況に惑うことなく、ヒースクリフは口を動かし続ける。
「うむ。具体的には、そこの二人――キリト君とマサキ君にフラグボス討伐をしてもらい、我々はこの場所で新たに来るかもしれないパーティーと“交渉”してお帰りいただく。分け前は我々、聖竜連合、風林火山、そしてキリト君とマサキ君で五等分する。討伐隊である二人には、見返りとして望むアイテムを一つ、優先的に選ぶ権利を与える。……どうだね? なかなか良い案だと自負しているのだが」
「ちょいと待ちやがれ! だったらわざわざ二人だけで向かわせなくても、俺たち全員でボス討伐に向かやいいじゃねェか! 何も二人だけに任さなくてもいいだろうが!」
「……これはあまり言いたくはないのだがね、クライン君。我々とて、たかだかフラグボス一体のためにそこまでの戦力を組むことはできないのだよ。しかも、今回は敵の情報が何もない。これからの攻略で必要な精鋭たちをここで失うわけにはいかない。彼ら二人が討伐を請け負ってくれるというのであれば、我々にとってこれ以上の条件はない」
「何ィ……!?」
クラインの頬が、耐えかねた怒りによって痙攣した。刀を持つ右手をブルブルと震わせながら、薄い笑みを浮かべるヒースクリフに怒
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