アインクラッド 後編
In the dream, for the dream
[6/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
掻き毟りながらガラガラと声を張り上げるクラインに、マサキは頭上を仰ぎながら、何よりも近くにあるはずの二枚のレンズを何よりも遠くを見る目で見つめ、呟いた。
「確かに、頭のどこかでは分かっているのかも知れない。あいつが――トウマが生き返ることなんて、あり得ないということを」
「だったら……だったら何で!」
「だがな」
マサキは視線を落とし、必死の形相で叫び続けるクラインを冷めた眼で射抜いた。泣き出す寸前の子供のような声を遮って、しわがれた声で空気を震わせる。
「……もう、見始めてしまったんだよ。確かに、よくよく考えてみれば馬鹿げた話だ。目が覚めたら全てを忘れてしまっている夢のほうが、まだ整合性が取れているくらいに。……だがな。それが例えどんな夢であっても、見始めたら最後、目覚めるまで見続けるしかないんだよ。俺が今立っているこの場所が、あと数時間で消えてしまう夢の中だとしても。俺には、最後まで夢の続きを見ながら道化のようにふるまい続ける選択肢しか、もう残されてはいないんだ……!」
暴走しそうになる感情の渦をどうにか制御しながら最後まで言い切ると、マサキは腰元の蒼風を握り締めた。葛藤が滲み出た表情を浮かべながら、キリトが得物である片手剣に手をかけ、クラインが悲しげな眼で二人を見る。
そして、限界まで張り詰めた緊張の糸を切ったのは、マサキでもキリトでもクラインでもない、第四者だった。
マサキは背後のワープポイントに気配を感じるや否や、即座に前方へ跳んだ。空中で身体を反転させ、ワープポイントを睨みつける。
やがて現れたのは、30人以上の大集団だった。追けられたか――、という疑念が一瞬頭をよぎるが、すぐに否定する。マサキはここに来るのに、念には念を入れてわざわざ最短距離ではなく迂回しながらの道を選んだのだ。そして道中のどの瞬間にも、追けられていた感触は皆無だった。つまりは……。
「お前らも追けられたみたいだな、クライン」
「……ああ、そうみてェだな……」
マサキの背後で、小さな声が交わされた。つまり、彼ら――装備を見る限り、恐らく《聖竜連合》だろう――はマサキではなく、クラインたちを追ってここまで来たのだ。
「くそッ! くそったれがッ!」
再び始まった四勢力による睨み合いで生じた沈黙を、突如クラインが破った。刀使いは腰元の得物を抜き放つと、マサキを押しのけて前に出る。数瞬後、刀使いは二人に背中を向けたまま怒鳴った。
「ここはオレらが何とかしてやる! 手前ェらはサッサとボスを倒せ! いいか、《蘇生アイテム》以外の報酬は、キッチリ山分けにしてやるからなコンチクショウ!」
突然のことに動きを止めていた聖竜連合のプレイヤーたちが、我に帰ったように一斉に武器を抜き放った。続いて
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ