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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
In the dream, for the dream
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と、視線の意図を理解したのか小さく頷く。エミはそれを確認すると、封筒の中から一枚の手紙を取り出して――。

 そのたった一枚の手紙が、エミの、そして二人の運命を交わらせる切符になることを誰も想像できなかったとしても、それは至極当然のことだったのかも知れない。



 ――第三十五層フィールド・ダンジョン、迷いの森。見渡す限りを白銀の雪が覆う零下の森に、マサキが、そしてクリスマスMob撃破による莫大な報酬を狙う全ての者たちが捜し求めている、一本の巨木があった。
 クリスマスMobが出現する候補地として挙げられている場所は幾つも存在するが、この場所はその候補に入っていない。にもかかわらずマサキがこの木だと確信するに至ったのは、情報屋たちによって提供されている候補は全てがスギ類のものであり、モミの木はこの一本しか存在しないということを、全フロアを回って確かめたからである。それに至っては、以前、フィンランド出身の植物学者が日本のクリスマスツリーの形状にやたらとケチをつけながら熱心に語っていたモミの木の見分け方が役に立った。聞いた当時は興味がないどころか疎ましくさえ思っていた情報がここまで重要な役割を果たすとは、世の中分からないものである。
 マサキは森に入るのに必須の地図を確認すると、目の前のワープポイントへと飛び込んだ。

「お前ェを、こんなとこで死なすわけにはいかねえんだよ、キリト!」

 マサキが目標の一つ手前のエリアへと繋がるワープポイントを抜けかかったとき、野太い声が聞こえた。どうやら同じくこの場所を見つけた先客がいたらしい。
 マサキは徐々に鮮明になっていく視界の中で、《ブラストウイングコート》に付与されている特殊効果の使用の是非について逡巡し、そして諦めた。ここで効果を使い、彼らに気付かれることなくモミの木に辿り着いたところで、恐らく戦闘中に彼らの、少なくともどちらかが追いかけてくるだろう。ならば、一日に一度しか使えない効果をわざわざ無駄にすることはない。
 マサキは溜息をつくと、ゆっくりと歩きながら突然の乱入者に驚く赤バンダナの刀使いと全身黒づくめの片手剣使いに言った。

「……久しぶりだな、キリト、クライン。前のボス戦以来だったか」
「マサキ……チクショウ、何てことだよ。手前ェまで……!」

 低く(ども)った声に、刀使い――クラインは困惑するように逆立った赤髪をガリガリと掻いた。

「分かんねェ……分かんねェよ、お前ら! お前らが死んだ仲間のことを忘れらんねェのは分かる! 特にマサキの場合、最初(ハナ)っからずっっとコンビ組んでた奴だったんだからな! ……けどよ! 死んだ奴が蘇ることなんてないってことくらい、お前らはとっくの昔っから分かってるはずじゃねェか!!」
「……さあ、な……」

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