アインクラッド 後編
In the dream, for the dream
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には些か不似合いな日本刀が現れると、数瞬遅れて残りの一ヶ所、薄青いYシャツの外側を、透明の衣が覆った。
――《ブラストウイングコート》。マサキが十五層ボス戦のLAボーナスで獲得したコートであり、今マサキが着けている唯一の《防具》カテゴリの装備である。
“敏捷値1.5倍ボーナス”と“《隠蔽》スキル値ボーナス”の二つの常時発動効果に加え、一日に一度だけ使える特殊効果を持つが、その代償として防御力は全くのゼロであり、なおかつ別の防具カテゴリの装備を一切身につけることが出来なくなる。つまり、防御力を上げることが不可能になるということだ(実際には《防具》カテゴリに属さない装備、即ち防御力アップ効果を持つ《装飾品》カテゴリの装備を用いれば不可能ではないが、それで付与できる防御力などたかが知れている)。
マサキはちらりと時計に目をやって時刻を確かめると、棚の上に置かれた写真を吸い込まれるように見つめた。夜の闇と沈黙だけが空間を包み、支配する。
「……それじゃ、行って来る。そこで待ってろ」
時の流れすら闇に呑まれてしまったのではないかと思うような空間で、マサキは写真の中の少年に短く言うと、雪舞うクリスマスの夜へと歩き出した。
「ありがとうございました。おかげさまで、レベリングが捗りました」
「攻略組なのにこんな中層プレイヤーに付き合わせてしまって……」
「いいよいいよ。ちょうどわたしもこのエリアのドロップアイテムが欲しかったところだし。それに、皆で狩れた分、わたしも経験値で得したしね。……あ、そうだ」
何度も頭を下げるプレイヤーを前にして、エミは照れたように笑いながら胸の前で両手を振ると、思いついたようにポーチへと手を入れ、数秒ほど漁った後にピンク色の結晶を取り出した。
「皆はこの後もレベリングしていくんでしょ? だったら、これ、使って?」
「ええ!? で、でもこれって、回復結晶じゃないですか! こんな高価なもの、受け取れませんよ!」
「いいのいいの。皆のおかげでアイテムも早く集まったから、そのお礼。それに、今の時間からレベリングするなら備えはいくらあっても足りないだろうしね」
エミは優しく笑いながらパーティーリーダーである片手剣士の両手に結晶を握らせると、恐縮する面々にもう一度微笑みかけた。
「じゃあ、わたしはもう行くね。レベリング、頑張って!」
「は、はいっ! ありがとうございました!」
こちらを振り返り、何度も頭を下げながら去っていく一団を見送ると、エミはふうと息を吐きながら振っていた右手を下ろした。既にどっぷりと夜の蚊帳が降りている一帯に深々と雪
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