第28話 誓約
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、そのどれを取っても、俺に取って強いマイナスと成るような物はない」
本当に、最初に比べたら、彼女からは色々な気が流れて来るように成りました。
いや、最初の状態が、一時間もしない内に自らの存在が活動停止と成る未来しか予想出来ない状況だった故に、悲観的な感情しか持ち得なかった可能性も高いですか。それに、もしかすると本当に彼女と出会った当初の彼女は、心に相当する部分が未発達。虚ろな心の状態だった可能性も有りますが。
其処まで彼女に告げてから、それまでの表情を崩し彼女に笑い掛ける俺。
そうして、
「まして、最初から言って有るはず。俺は有希の事を信用するって。
そもそも、信用出来ない相手に何時か真名を教える、などと言う約束はしない」
俺としては、簡単に信用している訳ではないのですが。
それに、俺が気を読む生命体である以上、相手が表面上でどんなに良い顔をしていたトコロで腹の底が透けて見えるのですから、今の有希には俺を偽る事など不可能だと思います。
その上、玄辰水星に因って、思念体から施されていた仕掛けの類は、すべて除去されているはずです。
この状況で、彼女の何処に信用出来ない部分が存在するのか。俺の方が教えて欲しいぐらいですよ。
「了承した」
短く、肯定の言葉を口にする有希。
しかし、未だ何か蟠りのような物を彼女から感じる。
これは……。
「確かに、今回の作戦はかなり危険やし、はっきり言うのならぶっつけ本番」
何故なら、一番重要な時期に俺がムカデの毒で寝こけて居ましたから。
「但し、もし失敗したとしても、完全に魂が虚空に消えるような事もない」
そう。今までも……。かつての生命でもこんな経験は何度か有ります。
魔王と呼ばれる存在をヤツが支配する魔界の湖深くに、俺の生命と引き換えに封じた時も。
夢の世界に顕現しようとした水の邪神を、遙かな次元の彼方に存在する瑠璃の城に、俺の霊気を囮として再び封じた時も。
どちらも、その時の生命は失いましたが、こうやって転生は出来ましたから。
「もし、失敗して、俺と、そして有希が共に転生を余儀なくされたとしても、次の生命でも必ず有希を見つける」
本当は、有希を巻き込む心算はない。最後の最期の瞬間には、絶対に彼女だけは逃がす。
これは、誰に誓う物でもない。たった一人。自分にだけ誓う誓約。
自らの矜持と、存在のすべてに賭けて行う誓約。
それに、それぐらいの事が出来る程度の能力は持って居る心算ですから。
彼女も同じ事を考えて居るのは間違い有りませんが。
そして、これから口にするのは彼女。長門有希と言う少女に対して行う誓い。
この場で交わして置かなければ、最悪の場合は手遅れとなる
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