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ヴァレンタインから一週間
第28話 誓約
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た万結が、もう一度、俺をその瞳に宿した後、再び有希を見つめた。
 有希の方も彼女を見つめ返す。

「この人を護って欲しい」

 共に戦い貫いたかつての戦友が、新しい戦友と成るべき少女に対してそう語り掛けた。
 その言葉に、今度は有希が微かに……。しかし、強く首肯いたのでした。


☆★☆★☆


 その境界線を越えた瞬間、世界が変わった。
 それまでと何ら変わらぬ風景。アスファルトにより舗装された道路が足元に存在し、周囲には住宅街に相応しい家々が立ち並ぶ。

 しかし、其処に漂う違和感。

 そう、道路には車が行き交う事が無く成り、
 同時に、それまで感じて居た周囲の家々に、人々が暮らす街独特の気配が消えたのだ。

 有りとあらゆる生命の気配が消され、ただ、無人の街が冬の夜の中、茫漠たる世界が存在する。
 感じるのは凍てつく冬の氷空と俺。そして、彼女の呼吸。

 俺は、それまでゆっくりとだが確実に歩みを進めていた足を止める。
 そして、万結から手渡された呪符の束と、さつきから貰った指輪を彼女に差し出した。

 そう。それは共に俺には必要のない物。
 更にこのふたつの品物は有希には必要で、同時に是非とも持って居て貰いたい物でも有りますから。

 俺の顔を正面から見つめる有希。その視線も、そして、彼女から感じる雰囲気も普段のまま。
 しかし、彼女は、その俺が差し出した品物を受け取ろうとはしない。
 そんな二人の間に、ゆっくりと時間が流れ去り、冬の属性を帯びた風が吹き抜けて行った。

「あなたは何故、わたしを簡単に信用出来るの?」

 何処かで……。何故か、遠い過去に聞いた事が有る。そんな質問を投げ掛けて来る有希。
 それに、これは奇妙な問いとは言えません。何故ならばこの戦い。羅?(ラゴウ)星との戦いの趨勢を決めるのは、俺の立てた策では俺ではなく有希。
 そして、場合に因っては、俺のすべてを彼女に預けるように成る可能性にも言及して有りますから。

「最初に俺の荒唐無稽な話を信用してくれたのは、オマエさんの方や無かったか。
 信に対して信で応える事は、そんなに異様な話ではない、と俺は思うけどな」

 流石に、かなり真面目な表情で最初にそう答える俺。
 確かに、この世界に放り出された時の状況から考えると、俺の荒唐無稽な話を信用する土壌は有ったと思います。まして、彼女の存在自体もかなり不可思議な存在だったのは事実。
 しかし、だからと言って、俺の言葉を簡単に信用してくれて当然と言う訳では有りません。

「次に、有希からは俺に対する悪意の類を感じた事はない。
 逆に、俺の体調を気遣ってくれるような雰囲気を強く感じるように成って居る。
 その他にも雑多な気は色々と流れて来るけど
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