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ヴァレンタインから一週間
第28話 誓約
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上に、彼女がギリギリの状態で居る事が手に取るように判るので、相対的にこちらの方が落ち着いて居られる。
 そう言う相手でも有りますね、相馬さつきと言う名前の少女は。

「まぁ、事実がそうで有ったとしても、オマエさんが俺の事を心配してくれたのは事実やからな」

 それに、確かに、さつきに有希の処分をさせる訳には行きませんか。
 もっとも、今の有希は以前の彼女。さつきに出会った当初の有希ではなく、俺の差し出した手を取った瞬間に、彼女の未来は大きく変わったのですが。

 それでも、その事を話して良い段階では有りませんか、今はまだ……。

「この指輪に関しては、俺の裁量で有り難く使わせて貰うな」

 俺のその台詞に、言葉の中に存在する真意を嗅ぎ取り、少し不満げな気を発したさつきでしたが……。
 それでも、

「それはアンタに上げた物だから、好きに使えば良い」

 やや不満を表すように鼻を鳴らした後、踵を返して立ち去って行くさつき。
 俺たちの方を顧みる事もなく、非常に彼女らしい潔い後姿。

「またな、さつき」

 その背中に対して、再会を約束する俺。
 そう。これは別れの挨拶などではなく再会の約束。

 立ち去る足を止め、少し顧みるさつき。そして、
 右目のみで俺を確認した後、軽く右手を上げ、背中とその右手で俺の再会の約束に応える。

 但し、その一瞬だけ顧みた彼女の口元が、普段の引き締められた形とは違う形が浮かんで居る事が確認出来た。

 そして……。
 そして、彼女の姿が完全に闇の向こう側に消えて行くまで、俺と、そして有希はその場に立ち続けたのでした。


☆★☆★☆


 完全に異界化の影響を受けない場所に設えられた基地(ベース)。もっとも、ベースとは言っても、大仰な施設を用意している訳では無く、有り触れた児童公園に人払いの結界を施した上で、数人の人間が存在して居るだけで有ったのですが。

「異界化の中心は、この道を真っ直ぐ進んだ先に有る東中学」

 紅い瞳に俺と有希を映した少女が、夜に相応しい落ち着いた声でそう語った。
 実用本位。もっとも、今回に関してはその異界化がどの程度広がる予想か、……と言う情報が不足していますが。

 ただ、それは、その異界化した空間に入り込む事が約束された俺と有希にはあまり関係のない事。そして異界化現象が起きた内部は正に異世界。
 外側から見た規模と、内部に侵入した際の規模が違う事はそんなに珍しい事では有りませんから。

 最初の一言を伝えて来た後、その紅い瞳に俺たち二人を見つめ続ける万結。

 その瞳に浮かぶのは……。

 いや、彼女の見つめていたのも俺ではない。その感情を示す事のない瞳に映していたのは俺の隣に立つ少女。
 相
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