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ヴァレンタインから一週間
第28話 誓約
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どうしたんや」

 振り返る前に、その声の主に話し掛ける俺。
 そう。この声の持ち主ならば、わざわざ、目で確認せずとも判りますから。

 その振り返った俺に目がけて優美な弧を描き、暗がりから煌めく何かが放り投げられた。

「?」

 蒼い月の光を受け煌めきながら、俺の目の前に飛んで来た小さな装身具を右手のみで、空中でキャッチ。
 それは……。

「それはお前にやる」

 長い黒髪を冷たい冬の風に靡かせて、少女はそう言った。
 彼女は輝くような瞳で俺ではない、俺の傍らの少女を見つめる。
 傍らの少女も、何故か彼女を見つめ返した。
 こちらは、普段の彼女のまま深い湖の如き瞳で……。

 静と動。炎と氷。その僅かな均衡。

 しかし、……と言うか、矢張り、

「いい。無事に帰って来なさいよ!」

 先に気圧されたように視線を外して仕舞った炎の少女が、何故か怒ったように俺を睨み付けながら、そう言う。
 その台詞自体もかなり強い口調。正直に言うと、この辺りの家の人間が男女の言い争うような声を聞いた、……と後に証言されるレベル。

 もっとも、現在は刑事ドラマやサスペンスなどの物語の中に存在している訳では無く、現実世界での出来事ですから、少々、路上で言い合いをしていたように聞こえたとしても、誰も気にする訳は有りませんか。
 妙な……しかし、現実世界で起きる可能性の有る事件が周辺で発生しない限りは。

「ひとつしかない命を、簡単に捨てられる訳はないやろうが」

 右手の中に存在する指輪から炎の精霊の気を感じ取りながら、そう軽口めいた口調で答える俺。
 その最中も、この指輪に籠められた霊力と、そして思いを感じて行く。

「判って居たらそれで良いのよ!」

 何か、この短い受け答えにすらギリギリ感を出しながらも、そう答えるさつき。どうもこの少女は世慣れないと言うか、人付き合いが苦手と言うか。
 そんなに怒鳴ってばかりだと、誰も寄って来てはくれませんよ。

 そう。少なくとも、笑う事は知って居るのですから。
 彼女はね。

「そうか」

 俺は、蒼白い人工の光が作り上げる丸い円の中に佇む黒髪の少女を見つめる。
 その瞬間、何故か、少し怯んだような気配を発するさつき。

 そんな、彼女に対して、

「心配してくれたんやな、ありがとう」

 ……と、告げた。
 その瞬間、何故か、更に怯んだような気を発するさつき。
 そして、

「か、勘違いしないでよね。アンタが簡単に死んだりしたら、其処の邪神の眷属を、あたしが如何にかしなくちゃならなく成るからなんだからねッ!」

 何故か、更に挙動不審と成って訳の判らないツンデレっぷりを披露するさつき。
 相手をしていて飽きない
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