第28話 誓約
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「デートはどうでしたか、忍くん」
夕刻。午後の七時を回った頃に水晶宮に辿り着いた俺と有希を待って居たのは、人の悪い笑みを浮かべた、この水晶宮の現在の長史和田亮で有った。
もっとも、確かに今日一日の俺の行動は、世界の命運を賭ける戦いに臨む人間の行動と言うにはあまり切羽詰まった人間の悲壮感漂うソレでも無ければ、自暴自棄に成った人間の物でもない、ごく平均的な休日を過ごす学生の姿で有った事は間違いないのですが。
但し、俺自身はこんな経験……最悪の場合は、一命を以て邪神や魔王を封じるようなギリギリの状況に追い込まれた経験は、実は一度や二度では有りません。故に、今更慌てても仕方がない事が判って居るからの、この余裕の態度なのですけどね。
いや、一命を以て封じた事が一度や二度ではない、……と言い直した方が正しいですか。
神を相手にするのに人間の為せる方法はあまりにも少ない物です。
普通にやれば、倒す事も殺す事も叶わない神を相手に其の一念を通すには……。
残念ながら、生命を賭けるしか俺はその方法を知りません。
最後の最期。命有る者が今際の際に刻むもっとも強い想い。その強い想いを持って神と相対すしか方法を知りませんから。
もっとも、今回のケースは厳密に言うと、そのギリギリの状況ではないのですけどね。
「相手は最高。平日の昼間やから他に余計な連中もいない。これで後ろにショウも無い仕事が待って居なかったら、もっとノリも良かったんやけどな」
以前の彼に対する口調とは異なった口調で、昨日訪れた時に腰を下ろしたソファーに納まりながら、そう軽口にも似た答えを返す俺。
その口調、及び普段とは違う……。昨日、ここを訪れた時とは違うややぞんざいな態度に、少し訝しむような雰囲気を発する有希と、表情ひとつ変えずに少しの笑みを浮かべた表情で俺を見つめる亮。
そんな亮に対して、
「それで、頼んであったモンは準備出来ているかいな」
……と、更にぞんざいな口調でそう問い掛ける俺。
「それでは、この仕事が終わった後に、こちらの世界で二、三日、ゆっくりと過ごしますか。私たちは、むしろその方が嬉しいのですが」
俺の質問は無視をするかのように、そう問い掛けて来る亮。
確かに、時間的な余裕が有るのならそれも楽しいかも知れない。
しかし、その前に……。
「その前に、亮。質問が有る」
相変わらず、まるで親しい友人に話し掛けるように水晶宮の長史に問い掛ける俺。
もっとも、今の俺にすればむしろコッチの方が自然。まして、相手の方もそう感じて居る可能性が高いはずです。
昨夜の綾……。玄辰水星の反応から判断するのなら。
「この世界の貴方の事ならば、貴方が考えて居る通りですよ」
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