第五十九話
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名前で呼ぶことには抵抗はないが、一つ気に入らないことがあった。
「……それじゃ、俺の呼び方が変わらないじゃないか」
「ん……まあそれは、そんな名前を付けたあんたが悪いってことで」
確かにアインクラッドで本名をつけていたのは、俺とアスナぐらいのものだったらしいのだが、その言われようには少し腹が立った。
「そっちこそ、リズベットって名前なのに『リズって呼んで』ってどういうことだよ。だったら、最初から『リズ』ってキャラネームにすれば良いじゃないか」
「うぐ……い、良いじゃない、愛称みたいなのがあっても!」
常々不思議に思っていたことを聞いてみたが、なんだかんだ彼女も適当に付けた名前だったのか、見るからにたじろいでいた。
「と、ところでさ。さっき何か言いかけてたけど、なんなの?」
露骨に話題を変えたリズであったが、俺はその問いに少しだけ口ごもってしまった。何故ならさっき言いかけていたこととは、『向こう』の世界のことである、《ALO》のことなのだから。
「さっきの話は……」
「なによ、どうしたの?」
リズはアスナの親友だった。彼女からしてみれば、親友が昏睡状態の手がかりがあるのだから、話を聞けば確実に行動を起こすだろう。
だがALO――というより、アスナの調査は何が起こるか解らないし、そもそも無駄足だという可能性もある。そして何より、SAOから生還した彼女を、再びVRMMOへと誘うことなど出来はしない……!
……と、SAOの時の俺ならばそう言うことだろう。
「アスナのこと、なんだ」
「アスナの……?」
SAOで俺はいつでも彼女に助けられて来て、リズがいなかったら俺は死んでいた。それに、こういうことでリズに隠し事をすれば、リズには絶対に許されないだろうから。
リズに心配させたくないという俺のエゴで、親友が昏睡状態だということを話さなかったら、俺だったら激怒するところだ。
「アスナはまだ目覚めていない。……まだ、VRMMOに囚われているかも知れない」
「どういうこと……?」
俺はリズに一から今の状況を説明した。ALOのこと、キリトのこと、アスナのこと、エギルのこと……そして、俺のこと。俺もキリトたちへの恩を返すためにALOに入って、風妖精《シルフ》として戦ったことや、今日も行ってキリトと合流する予定のこと。
……そして、まだ俺はVRMMOに入るということが、本能的に怖がってしまっているということ。最後はカッコ悪くて言い渋ってしまったが、SAO時代にはもっと弱いところを見られていると思い返すと、かなり恥ずかしかった。
PoHとの一応の決着を付ける前の、シリカと会った時のような、無理に明るくしているような自分よりは、まだマシ
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