第五十九話
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を押し込んだ。
「むぐっ!」
リズもそのことはすぐに悟ったようで、サンドイッチを口に含みながらコクコクと頷いていた。……図らずとも、第三者から見ればかなり恥ずかしい図になっていたが。
「ふぅ……って、あたしが悪かったけど、もう少し方法ってものが無かったわけ?」
「思いつかなかったな」
リズの追求を白々しく避けながら、俺も注文した握り飯を食べようと手を伸ばすと、他の場所から伸ばされた手に食べようとしていた握り飯を奪われた。
突如として奪われた握り飯を急いで目で追うと――
「は、はい、あーん……!」
――顔を真っ赤に染めながらプルプルと腕を震わせ、俺から奪った握り飯をこちらに向けてくるリズの姿があった。
「えっと……リズ、さん……?」
「……ふふふ、あ、あたしだけやられるのはふ、不公平じゃない……」
相も変わらず腕をプルプルと震わせながら、俺に向けられるリズの視線――視線を合わせようとすると背けられるが――と手に持っている握り飯から、いつになく俺へと激しいプレッシャーが襲いかかった。俺も、久々に向けられるプレッシャーに固まっていたが、リズの手が止まる様子も全くない。
……やるしか、ないのか……!
どうにかこうにか俺は『覚悟』を決めると、俺はリズが持っている握り飯に顔を近づけ、そのまま食そうと口を開き――
「や、やっぱり無理っ!」
「むがっ!」
――いきなり諦めたリズが照れ隠しに握り飯を投げ、そのまま俺の口へと見事なコントロールでシュートされ、俺の喉へと握り飯が突入していく。
当然のことながら、徐々に息がしにくくなって来て、目の前のリズの顔が真っ赤から青ざめていく……俺の顔もそうなっているのだろう。
「ショウキ! ええと、水っー!」
リズの持っていたペットボトルから、口に注がれるお茶によって握り飯を飲み込むと、なんとか一命をとりとめて深呼吸する。
「ぜぇ……はぁ……死ぬかと思った」
「ご、ごめん……」
これもリズを無視して放置プレイしたり、サンドイッチを口に押し付けたりした天罰だというのだろうか。……しかしまあ、アインクラッドではどうやっても出来なかったことがリズとやれて、少し嬉しかったりもするけれど。
「大丈夫さ。……ところで、リズ……」
「うーん……違うわよ、里香!」
話しかけようとしたところ、いきなり鼻先に指を持って行かれて、少し驚いて言葉を止めてしまう。
「ここは『向こう』じゃないんだから、あたしの名前は里香よ。ほら、あたしも翔希って呼ぶし」
確かにここはもうアインクラッドではないのだし、だからといって今さら名字呼びというのも他人行儀な話だ。アバターの名前ではなく、現実の
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